北側クリステルの雄叫び | 『お月様でナイスショット』

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2017年7月4日、午後3時30分。

李春姫は、全世界に向けて吠えた。

 


 

「北朝鮮の科学者らは、新たに開発した大陸間弾道ミサイルの発射実験を成功のうちに実施した」

「北朝鮮は核兵器に加え、大変強力なICBMを保有する核強国であり、これがあれば世界のどこであっても攻撃できる」

 

北朝鮮が重大ニュースを発表するたびに、李春姫が担ぎ出されている。

彼女は、ネット世界では「北側クリステル」と呼ばれているらしいが、その大仰な表現と芝居じみた言い回しは滑稽ですらあったが、今回は大きく違った。

彼女の雄叫びが、世界に対して具体的な恐怖をもたらしたのは初めてではないか。

 

「bunさん、考え過ぎだよ。アメリカも北朝鮮も戦争までは踏み込めないよ」と言われる。

 

まず、アメリカの理由。

なんとなれば、アメリカが攻撃すれば、北朝鮮の反撃で韓国国民の内、100万人が死亡すると言われているからである。

同盟国のこんな多数の市民が殺されることが明確な以上、アメリカは決断できないし、実行できない。

 

では、北朝鮮の先制攻撃の可能性はどうか。

アメリカ側の圧倒的な軍事力によって、北朝鮮軍は数日で破滅するといわれているので、彼らは自らからは仕掛けないというのが定説である。

 

すると、両国は、今後も睨み合いながら、危うい均衡を保ちつつ、ただ無為に時間が経過していくだけなのか。

いや、北朝鮮にとっては無為ではない。

この間、北朝鮮は、アメリカの西部大都市に打ち込める三段式のICBMの開発、そして、核弾頭を装着できる技術力を確実に高めることが出来るのだ。

つまり、均衡しているように見えて、時間の経過とともにパワーバランスは崩れ、北朝鮮に有利に働くことになる。

現在は、韓国国民が捕虜となっているが、アメリカ西部を攻撃できる、核弾頭を搭載したICBMの開発と配備により、アメリカ国民も捕虜となってしまい、世界のいずれの国も北朝鮮を制御できなくなってしまう。

 

そんな状況になった時、彼らは世界に対して何を要求してくるのだろうか。

想像するだけで怖くなるが、冒頭の李春姫は、老体に鞭うち、大仰な表現と芝居じみた言い回しで、まずはこう叫ぶだろう。

 

「北朝鮮は世界を支配する核強国となり、もはや誰も邪魔はできない。尊敬する金正恩同士は、とうとう世界を統治する統裁になられたのである。」

 

じっと待っていると、こんなシナリオになってしまうかもしれない。

 

一方で、不幸にも開戦となってしまうと、どうなるのか。

数年後、いずれの国の先制攻撃であったり、或いは突発的な事故だったり、そのキッカケはどうであっても、彼らのICBMが核弾頭を装着してアメリカに向けて発射される時、同時に準中距離弾道ミサイルのノドンが日本に向けても発射される。

無論、攻撃目標は、東京や大阪といった大都市や沖縄などの駐留米軍基地なんかではない。

彼らが狙っているのは、日本各所に点在する原子力発電所である。

ノドンは津波以上の破壊力で日本の全ての原子力発電所を破壊し、核を飛散させ、日本は放射能に覆われていく。

 

核攻撃を受ければ、アメリカは核弾頭を搭載したICBMによる反撃に躊躇はない。

世界同時消滅、人類滅亡なんてのが、うっすら現実味を帯びてしまったようにも思える。

 

米国にとってのレッドラインは米本土に届くICBMの開発と新たな核実験だと聞いていたが、実は、米本土に届くICBMの開発は、人類の未来にとってのレッドラインでもあったのだ。

 

金正恩は言った。

「米帝との長い戦いも、ついに最後の局面に入った。我々の警告を無視、我々の意思を試してきた米国にはっきり示す時が来た」

「我々の戦略的な選択を見せつけられた米国の野郎どもは非常に不愉快だろう。独立記念日の贈り物が気にくわないだろうが、今後も大小の贈り物たちを頻繁に送り続けてやろう」

 

北が描く、アメリカとの戦いの最後の局面とはどんな絵なのであろうか。

一方のアメリカのノー天気野郎は、「彼は人生でほかにやることはないのか?」なんてホザいている。

先ほども見たように、100万人の韓国市民が北朝鮮の捕虜になっている以上、先制攻撃の決断は控えるはずであるが、彼のこれまでの言動をみていると、「どうもありがとう、これは俺からの贈り物です。どうぞ、ご賞味あれ」なんて、ミサイルのボタンを押しかねない危うさを感じる。

 

押せば、世界の終わりである。

しかし、押さなくても、このまま時間が経過すれば、先に見たように、世界には地獄絵が待っている。

デッドロックか。

いや、実は、唯一、或る手段が問題解決法として残っている。

賢い読者はお見通しだろうが、残念ながら、この方法の実現性はかなり低い。

しかし、アメリカは確実にこれを狙っていて、手は打っていると思う。

 

さて、今後、金正恩のアメリカへのプレゼントの度に、李春姫はテレビに登場するだろう。

しかし、長くは続かないのではないか。

遠くないいつか、彼女は叫ぶことをやめ、私たちも彼女を目にすることが出来なくなってしまうかもしれない。

 

見渡す限り、ガレキだらけの破壊しつくされた都市。

漂う粉塵のせいで、昼と言うのに薄暗い。

数分で死に至るような強い放射能が漂う地上で、生き残っていられるのは、果たして誰か。

 

寒気がしてきたぜ。

今夜も眠れん。