前回の記事で取り上げた「卡子(チャーズ)」
 

 

 

 

 

 

 

その中で「チャーズ」の体験を書かれた遠藤誉さんの本を
「読んでみようかな」と書いてたけど、読みました。

 


『もうひとつのジェノサイド  長春の惨劇「チャーズ」』

 

 

 

 

 

 

ちなみに読むにあたって

内容的に「つらい」というのは覚悟の上。
しかも私は場面をシッカリ想像して

物語の中に入り込んでしまうタイプなので、

しばらく後を引く…。

ということで

夕食の支度をしなくていい「夫メシ」の休日、

朝から読み始めたんですよ。

そしたらこれが正解!

 

普段は本を読み始めたらスグ眠くなるのに、

ぜんっぜん眠くならない。

 

どころか、とにかく先が気になって気になって。

 

昼食以外はひたすら読んで

めっちゃ読むのが遅い私が1日で読んでしまいましたわ。

 

 

 


これ、タイトルは「チャーズ」となっているけど

それだけを書かれたものではなくてね。

 

 

お父さまが満洲国の「新京(長春)」で

製薬会社の技術者兼社長をなさっていたことから

著者もそこで生まれられ、物語も終戦直前の

「新京(長春)」から始まるの。

 

それがソ連が侵攻してきて、終戦。

 

でもお父さまのお仕事の関係でその後も引揚げられなくて

ソ連→国民党軍→共産党軍→再び国民党軍の支配を受け、

そして長春の飢餓、「卡子(チャーズ)」に

巻き込まれるんですね。

 


その後、命からがら長春から脱出したあとも

吉林省の延吉から天津と中国々内を転々とされて

1953年に日本に帰国されるまで

いろいろ辛く苦しい体験をされる。

それが、子供だった著者の体験や目を通して語られるんです。

 

おかげで、意志や決定権を持つ大人でさえ

翻弄され苦しむようなことがあると

一番苦しめられるのは自分ではどうしようもない子供だと

あらためて突き付けられたようでしたわ。

やりきれないよね…。

実際、その時のあまりにも壮絶な体験からきていたPTSDが

今回のウクライナのことで蘇ったそうで、

それを克服するための荒療治としてこの本を出版されたと

「おわりに」に書かれていました。

 


それにしても。

 

著者はお父さまが大きな製薬会社を経営をなさってた

というお立場の上に、お父さま

(これがもう仏さま、いや、信仰から言えば

「神様?」のようなお方!)の信条から

戦後も中国にとどまられたことで

なおさらほかの日本人とは違う体験をされたと思うけど、

もし普通の人たちと一緒に帰国されてたら…。


あんな過酷な体験をされることはなかったかも

と思いましたよ。

 

そのかわり「卡子(チャーズ)」のことが

こんなふうに知られる機会も

なかったかもしれないけどね…。

 

 

あと、延吉や天津での生活から垣間見えた

建国前後の中国国内の様子もとっても興味深かったし、
これは私の個人的なことだけど、

戦後間もなくのソ連軍進駐の混乱を

当時大連にいた父たち一家のことと重ねて読みました。

 

というのも書いておきましょう。

 

 

 

 

 

おまけのひとこと。

 

あのずる賢い叔父の「白ねずみ」は

あのあとどうなったんだろう…。

 

きっとろくな目にあっていない

 

と思いたいけど、世の中理不尽だからなー。

 

あの図太い神経と処世術で

上手く生き延びられたかも。