何という贅沢な1週間だったのだろう。8日が渡辺真知子さん、庄野真代さん、アロージャズとのコラボ(けんしん郡山文化センター)。そして昨11日は八神純子さんが「歌いたい曲を歌いたいだけ歌う」という年に一度のスペシャルライブ『ヤガ祭り』へのゲスト出演(昭和女子大学 人見記念講堂)。この2つの公演に参加することができたのだ。郡山についてはご報告済みなのでそちらをご参照願いたい。(米沢、取手のヨシリンとの『宝くじ』は残念ながら不参加😭)

 

 

 ヤガ祭りは初めてでゲストのポジションが分からないので、宏美さんの出番はどのくらいあるのか?と思っていた。だが事前に宏美さんから「覚え切れないほどの資料と格闘している」旨の情報が流れて来ており、かなり濃厚なお二人の絡みが予想されてはいた。ところがお二人、いや4人のスペシャルステージはその想像の遥か上を行った。まず宏美さんはゲストと言うより、純子さんと全くタイマン、対等のお立場でのジョイントコンサートだったと言えるだろう。一夜限りの大興奮のステージ、完全ネタバレでご報告してみたい。

 

ヤガ祭り

【1日目】10.11(金)

ヤガ祭り the 6th Legends

〜with 岩崎宏美〜

【ピアニスト】国府弘子&宮本貴奈

昭和女子大学 人見記念講堂

 

第1部

 

●ヤガ祭り(八神・宮本)

●さよならの言葉( 〃 )

●New York State of Mind ( 〃 )

●月に書いたラブレター( 〃 )

 

 宮本さんのピアノのリズムが聴衆を挑発するように始まると、純子ファンからいきなり手拍子だ。この『ヤガ祭り』のテーマソングである。続けてMCなしでいきなり懐かしい「さよならの言葉」で私はすでに夢見心地。私は学生時代、純子さんも7thアルバムまでは相当聴き込み、どの曲も口ずさめるほどなのだ。ピアニストの宮本さんは、今年純子さんとお二人でツアーを回られているそうで、宏美&弘子と同じようなベストパートナーだと言う。そのお二人でニューヨーク公演もされたことから、ニューヨークの香りのスタンダード、そして純子さんソロコーナーのラストは19thアルバム『There you are』より。純子さんの変わらぬベルベットボイスには惚れ惚れする。

 

●ぼくのベストフレンドへ(岩崎・国府)

●大切な人( 〃 )

●思秋期( 〃 )

●夢やぶれて( 〃 )

 

 そしてわれわれにはお馴染みのシロ美&シロ子が登場、『Piano Songs』コンビの定番4曲。「ぼくのベストフレンドへ」は、もちろん宏美さんの一五一会と弘子さんのピアニカ演奏、宏美さんのトチリ付き🤣。でもこれでいい具合に肩の力が抜けたか。お二人のオリジナル「大切な人」の後、圧巻の歌い上げ2曲で、宏美さんとの共演を待ち望んでいたという純子ファンに岩崎宏美健在を強く印象付けたことであろう。

 

第2部

 

●Prologue (八神・岩崎・宮本・国府)

●万華鏡(八神・国府)

●出発点〔スタートライン〕(岩崎・宮本)

 

 さて、2部は期待のジョイントステージである。何と2017年の『ヤガ祭り』でヨシリンが歌った「Prologue」のお二人のデュオで幕開けである。純子さんとヨシリンの動画をご紹介しておこう。

 

 

 ピアニストのお二人はどのように絡むのだろう、と思っていたら、下手側に弘子さん・上手側に貴奈さんのピアノが置かれ、お二人がアイコンタクトで演奏を進めるという、この上なくゴージャスなサポートスタイルである。

 

 続いて持ち歌交換コーナーである。純子さんが選んだのは「万華鏡」。宏美さんが「純子ちゃんが歌うと色っぽい『万華鏡』になりそう」と言えば、歌唱後には純子さんが「最後の掛け合いのコーラスのところ、私の声と宏美ちゃんの声とでは、その後の男性の対応が変わりそう」と投げかけるが、宏美さんは「これだけ2人の性格が違うからね。私そんなこと考えて歌ったことない」とバッサリ(笑)。

 

 宏美さんの歌は、これも『There you are』収録の「出発点」。私の感想では、宏美さんが選んだと言うより、純子さんが宏美さんに合う曲を選ばれたのではないか。このコーナーでは持ち歌だけではなく、ピアニストも“交換”。耳に馴染んだ弘子さんのピアノで聴く純子さんの「万華鏡」は新鮮、貴奈さんのピアノは弘子さんとはまた違ったテイストで宏美さんを支える。「出発点」でも後半は純子さんによるハモりあり。

 

●思い出は美しすぎて(八神・岩崎・宮本・国府)

●すみれ色の涙( 〃 )

●ロマンス( 〃 )

●ポーラー・スター( 〃 )

●シンデレラ・ハネムーン( 〃 )

●パープルタウン~You Oughta Know By Now~( 〃 )

 

 そしていよいよ純子ファンも宏美ファンもお待ちかねのヒット・メドレーである。全曲お二人のハーモニーが聞ける、(恐らく)純子さんによるハーモニー付けである。よく取ってつけたような共演だと、お互いの掛け合いとユニゾンが多く、ハモりはほとんどなかったりすることが多い。だが、このお二人は違う。どの曲も本格的なハモりであり、しかもそれが攻守ところを変えながら目まぐるしく進行する。しっかりした歌唱力に裏打ちされたお二人ならではの演奏である。そしてさらにそれを支えるツインピアノ。純子さんの持ち歌は貴奈さんがイニシアチブを取り、宏美さんのオリジナルでは弘子さんがリードする。でありながら、お互いのピアノが丁々発止とやり合ったり、スッと寄り添い合ったりするのである。まさに4者の音楽性が火花を散らし合いながら一つの音楽として昇華する、稀有な場面にわれわれは立ち会っていたのである。

 

 「思い出は美しすぎて」は、あの印象的なギターのイントロを弘子さんがピアニカで始める。曲の配列も考え抜かれたもの。比較的ゆったりした2曲から入り、徐々にテンションを上げてゆく。「ポーラー・スター」では、純子ファンの見よう見まねで宏美ファンも右手を突き上げる。ラテンアレンジと巻き舌(笑)の「シンデレラ〜」は純子ファンにも火をつける。そして、「パープルタウン」のイントロが鳴り出すと、純子ファン総立ち❣️もちろんわれわれ宏美ファンもすぐに続く。オールスタンディングでのリフレインでは、思わず声が出る。一夜限りの、最高の瞬間に酔いしれたのである。

 

●ジプシー・バロック〜聖母たちのララバイ(八神・岩崎・宮本・国府)

 

 そしてラストは、もちろんこの曲。30年近く前の、伝説の『ふたりのビッグショー』の再現である。いや、お二人のジャズピアニストの強力なサポートを得て、さらにパワーアップした「聖母たちのララバイ」である。弘子さんのシンプルなバロック風のピアノに、貴奈さんが参戦してくるイントロからしてスリリング。歌ではそれぞれのソロ部分で持ち味を発揮、サビでは絶妙のハーモニーでわれわれを至高のひとときへといざなってくれた。

 

アンコール

 

●みずいろの雨(八神・岩崎・宮本・国府)

 

 アンコールは、私の(と言うか大方の)予想通りこの曲である。純子ファンには耳タコ?われわれにもお馴染みの「宏美ちゃんの声が天から降って来て、原宿の歩道橋の上でほぼ書き上げてしまった」という、これまた伝説の「みずいろの雨」。頭サビの部分はハイトーンのメロディーの純子さんに対し、宏美さんのハーモニーが支える。その後のソロ部分では、宏美節もチラリ。そして元々ラテンタッチのこの曲、弘子さんの得意中の得意の分野だ。お二人のピアノもまるで闘っているのかと思うと、一つに溶け合ったりする。まだまだ聴いていたい、いや是非ツアーで全国を回って欲しい。誰もがそんな想いにさせられた一夜限りのステージであった。

 

左から弘子さん、宏美さん、純子さん、貴奈さん

(2024/10/11 bumimas_shochan撮影)

 

 今日は『ヤガ祭り』2日目、今夜はバンドを率いてのステージと聞いている。大成功間違いなしだが、その盛会を祈りつつ筆を置くことにしよう。