尿沈渣で血尿が無いのに、潜血反応+++

尿が赤ワイン~コーラのような色で,尿沈渣で血尿がないのに潜血反応

(+++)となったら,ミオグロビン尿かヘモグロビン尿である。血清が透明

ならばミオグロビン尿で,ピンク色ならヘモグロビン尿である。ともに,急性

腎不全が起こる可能性が大きいため早期診断が大事である。尿中ミオグロビン

の検査が 24時間可能な病院は少ないので,病歴,特有の尿色,尿沈渣と尿潜

血反応の食い違い,CPK,AST,LDH などの筋肉由来の酵素の上昇などか

ら臨床診断しなくてはならない。

 

トレーニング不足の人,暑い日の激しい運動の後,筋肉痛,そして,尿沈 で血尿がないのに潜血反応(+++)の尿と,典型的な急性運動性横紋筋融解によるミオグロビン尿の経過である。

 

1~2日には,見かけが元気なため,よく見逃され,3~4日目で腎不全症状が出現して初めて診断されることが多い。

 

暑い日の運動後から赤ワインやコーラのような尿が出ていないかどうかを確認することと,疑ったら,検尿で血尿がないのに潜血反応が強陽性に出ないか確かめることである。

 

筋肉融解が起きやすい因子としては,低 K血症,脱水,低 P血症がいわれており,救急室でよくみられるミオグロビン尿の原因には,以下のものがある。

 

①    トレーニング不足の人の暑い日の激しい運動(急性運動性横紋筋融解)

②    昏睡患者での長時間の筋肉圧迫(薬物中毒,特にアルコール中毒)

③    筋肉挫滅外傷(crash syndrome)

④    痙攣重積

⑤    偶発性高体温症

⑥    アルコール性ミオパチー

 

横紋筋融解の合併症

1. ミオグロビン尿による急性腎不全

ミオグロビン尿の存在が確実ならば,急性腎不全を防ぐための対処をしなく

てはならない。どの程度のミオグロビン尿で急性腎不全になるかは,横紋筋融

解の原因やもともとの腎機能によって異なるため簡単には言えないが,CPKが 20,000以下で急性腎不全になることは少ないと報告されている。CPKが20,000以上ならば,以下の①~④が推奨されてきたが,①の生理食塩水を 400ml/時で,3ml/kg/時の尿量を維持することは重要であるが,②~④は臨床証拠が弱い。

① 生理食塩水 400ml/時

② メイロン좲(尿 pH 6.5以下のとき)

③ フロセミド

④ マニトール

 

2. 損傷筋肉の腫脹による muscle compartment syndrome

四肢の損傷筋肉の腫脹による血流障害のため,さらに筋肉損傷が増大する悪

循環を断ち切るために,筋膜切開(fasciotomy)が必要となる。四肢の筋肉

挫滅外傷の場合は有名であり整形外科医が管理するため,問題にはならないのが普通である。

しかし,アルコール中毒やその他の薬物中毒による昏睡での長時間の四肢の筋肉圧迫によるもの(drug-induced muscle compartment syndrome)では,主治医が内科医であることが多いため,筋膜切開のタイミングが遅れることが多い。腫脹した四肢の遠位の 5Ps(Pain,Paresthesia,Pallor,Pulseless-ness,Paralysis)の出現に注意が必要である。最近では 5Psが出現する時点では遅すぎるとして,組織圧を計測し,30mmHg を超えたら筋膜切開の適応を勧めている報告もある。