刺創や銃創の場合は,見かけからは想像もつかない部位まで損傷が及んでい
たり,異物が残存したりしていることがあるので,若い研修医だけの判断で入
院や通院を決めないほうがいい。

 

穿通性損傷では,頸部に創があるならば
胸腔にも,胸部に創があるならば胸腔,縦隔や頸部にも,腹部に創があるなら
ば胸腔や縦隔にも,鼠径部に創があるならば腹腔に達しているかもしれないと
考えて調べるべきである。

 

深く刺さっていて抜いた際に大量出血が起きる可能性が高い場合には,
救急室では抜かず,十分な輸血の準備をして手術室で抜くべきで,初診医とし
ては注意が必要である。

 

緊急開腹の適応は

①ショック,腹部エコー所見などで
明らかな腹腔内出血
②腹膜刺激徴候
③臓器逸脱

 

これらが来院時にない場合は,
local wound exploration にて腹腔内に創が
達している場合は腹部エコーや腹部 CT スキャンでの出血の判定,腹膜刺激症
状の出現で腸管の損傷の判定をして,手術の適否を決めるのが普通と思われる。

 

米国の報告では,
local wound exploration にて腹腔内に創が達している場合
でも,出血や腹膜刺激徴候が出現しないなら,
24時間の入院経過観察で後は
通院にして問題はないとしている。

 

頸部の穿通性損傷でも,全例手術するのではなく患者を選んでするという報
告が多い。

拍動性あるいは大きくなりつつある血腫
創からの active bleeding,あるいはショック
血管雑音(bruit)か thrillがある

皮下気腫
嚥下障害
嗄声,
stridor,呼吸困難
頸動脈触知不能
血痰,喀血
意識障害あるいは神経学的異常

 

また,創の位置によって CT スキャン,食道造影,気管支鏡,血管造影など
が必要とされている。