見えている外傷より、その外傷の原因となった疾患の方が怖いことがある。

例えば転倒したのなら、完全房室ブロックなど不整脈が起きたかも。

 

医療面接とバイタルが重要。

「なぜ転んだのか」と聞いてみるといい。覚えてないと言われたら、意識消失や痙攣が先行した可能性を考え心電図チェックしてるだろう。

いつでも、「なぜ倒れたのか?」「なぜ転落したのか?」「なぜやけどしたのか?」「なぜ溺れたのか?」

 

頭部外傷だけでショックにはならない。多発外傷の大きな落とし穴である。

意識障害や片麻痺、共同偏視などあれば脳出血あるのは明らかだが、それよりショックの原因の診断と治療が最優先だ。頭部外傷だけなら血圧は上昇し、脈拍数が減るのが普通。

ショックなら頭部外傷とは別にショックを起こしている原因があり、そのほうが頭部外傷よりも優先する。頭蓋内損傷~病変よりもショックの治療、検索が常に優先する。

 

一般的に外傷性ショックの原因は3つに分けられる。

①縦隔~胸腔、腹腔、骨盤~後腹膜での大量出血で中心静脈圧の下降するもの(外傷性ショックの95%)=頸静脈虚脱

②緊張性気胸、心タンポナーデ、横隔膜ヘルニアなどの中心静脈圧の上昇するもの=頸静脈怒張

③脊髄損傷での神経原性ショック

 

緊張性気胸(皮下気腫触れる)は胸腔ドレーン1本で良くなるので優先して治療する。患者が危険なら静脈穿刺針を数本第2肋間に挿入して一時的な減圧をする。

 

顔面/頭部外傷で意識障害ある患者では、頸椎・頚髄損傷もあると想定し、バックボードに固定する。ネックカラーをつけたまま診療する。


普通の経口気管内挿管は頭部の過伸展状態で、頭部CTもかなり頭部を前屈するため、いずれも頚髄損傷があればそれを悪化させる可能性が大きいといわざるを得ない。頸椎側面のX線撮影の前に急いで気道確保が必要なら、介助者に頭頚部をしっかり支持してもらいながら、経口気管内挿管を試みるべきである。頸椎損傷のXRは正面、側面、開口位の3方向撮影すると、全頸椎損傷の100%診断しうる。コツとしては、頸椎のすぐ前の軟部組織が頸椎損傷に伴う出血で腫脹していないかどうかを探すこと。まず第2頸椎の高さでの①retropharyngeal space(正常では成人、小児とも7mmを超えない)と第6頸椎の高さでの②retrotracheal space(正常では成人は22mm、小児では14mmまで)である。また、densの前面から第1頸椎の前弓までの③predental space(正常では成人は3mm、小児は5mmまで)をチェックする。3×7=22の法則。

 

意識障害患者で頚髄損傷を疑う場合は?

 

頸椎CTスキャンの適応は?

 

 

ただのアル中?頭蓋内損傷?

・吐血がなくても体位性低血圧や貧血が疑われる場合には,消化管出血を見逃さないために胃洗浄や直腸診をすること。

・発熱がある場合,アルコール禁断症候群だけでは39℃を超えることは稀なので積極的に検索することが必要である。右上葉Klebsiellaの肺炎,肺結核症,頸部硬直のない髄膜炎,肝硬変での腹水患者に合併する特発性細菌性腹膜炎(spontaneous bacterial peritonitis)や腹壁の蜂窩織炎,Vibrio vulnificusによる壊死性筋膜炎などをマークすべきである。

・腹痛、嘔吐患者ではアルコール性肝炎、膵炎、アルコール性ケトーシスなどが考えられる。アルコール依存症患者では唾液腺由来のアミラーゼが上昇していることがあるため,血中アミラーゼ上昇=膵炎と決めつけると大

きな失敗につながることもある。アルコール性ケトーシスは実際に多いので、よく知っておく必要がある。

・アルコール禁断症候群:飲酒中止後12~30時間で起きる rum fitと呼ばれる全身痙攣で運ばれてくることが多く、ほとんどが 1~2回で終わるため治療しなくてもよい。しかし,その後の振戦せん妄(delirium tremens)への移行を考慮してジアゼパム、クロルジアゼポキシドなどの投与を開始すべきである。

・外傷:ここに挙げた症例のような頭蓋内損傷以外に,道路で倒れていたという場合,酔いが覚めるまで救急室の隅に放置されていて,頸椎損傷や脾臓破裂が遅れて見つかるというのは救急室で古典的に有名な話である。泥酔患者の頭蓋内損傷や疾患を見逃さないために,外傷や急病の可能性を考えて救急隊や同乗者に詳細な情報収集が必須である。

・複数で飲んでいたのなら,皆から離れた時間があったかどうか

・発見場所の近くに階段がなかったか(転落の可能性)

・今日の飲み方が泥酔するような飲み方だったのかどうか

 

バイタルサイン,頭髪をかき分けて丁寧に頭皮に打撲痕がないか確認することや,鼓膜血腫(頭蓋底骨折)がないかを診る。家族が来るま

では帰宅させないために,警察に応援を求める。

 

経過観察ベッドに移動しても

1時間ごとのバイタルサイン、意識レベル、瞳孔のチェックを看護師に指示し、手が空いたら自分も診にいく。

 

 

軽症頭部外傷でいつ頭部 CTを撮影するか。

CT の判断はやっぱり軽症のときに悩むよね!

軽症頭部外傷(Minor head injury)の定義

誰かが見ているところでの意識消失、健忘、失見当識で GCS 13~15のもの


以下の項目が1つでもあれば頭部 CT を撮影する

 

高度危険群 High-risk (for neurologic intervention)

1. GCS score<15、受傷2時間後

2. 開放性または陥没骨折疑い

3. 頭蓋底骨折疑い(鼓膜内血腫、パンダの目、髄液鼻漏・耳漏、耳介後部血腫)

4. 2回以上嘔吐

5. 65歳以上

中等度危険群 Medium-risk (for brain injury on CT scan)

6. 30分以上の逆行性健忘

7. 重大な外力がかかったと予想されるもの(人対車、車外に放り出された、1m または5段以上からの転落)