例えば完全房室ブロックのためにショックとなり、脳血流が減少して一過性脳虚血発作とよく似た状態で不全麻痺をきたす場合がある。


脳梗塞らしい患者でも徐脈or低血圧が認められる場合は頭部CTスキャンの前に心電図チェックが必要なのである。

 

頭蓋内病変だけではショックにならない!頭部外傷だけではショックではならない。


①    心血管系病変→ショック→脳血流不全→TIA

②    腹部疾患→ショック→脳血流不全→TIA

③    大動脈解離→内頸動脈血流不全→TIA,脳梗塞

 

②腹部疾患→ショック→脳血流不全→TIA

十二指腸潰瘍の穿孔による汎発性腹膜炎を起こし,そのためショックになり,意識障害と片麻痺で搬送された症例もある。この患者も,手術の後,ショックの改善に伴い,意識障害,片麻痺とも消失した。


③大動脈解離→内頸動脈血流不全→TIA,脳梗塞

新鮮な脳梗塞への t-PA治療が時間との勝負なので,急ぐあまり,医療面接や身体診察が不十分になり,大動脈解離による意識障害や片麻痺の患者がTIA~脳梗塞?と誤認されることが少なくなく,誤って t-PAが投与されることも起きている。最初の症状(目撃者から聴く),両上肢の血圧測定,聴診(AR の心雑音),胸部X線写真の読影(縦隔拡大,大動脈石灰化の移動)が鍵である。

 

片麻痺や意識障害から頭蓋内病変の存在が疑われても,低血圧~ショックの場合は,頭蓋内病変のために血圧低下~ショックになったと考えるよりも,何かの原因で血圧低下~ショックが起こり,そのために脳血流が減少して一過性脳虚血発作や脳梗塞を起こしていると考えてアプローチすべきだと思う。


外傷でも急病でも,ショックはいつでも頭蓋内の損傷や病変より優先させて治療・検索すべき

なのである。