重要臓器の血流不全に伴う代謝障害や臓器障害を呈している状態である。

大事なのは乳酸値とエコー。

 

何らかのバイタルサインの変化があるときは、乳酸値を測定したほうがよいだろう。乳酸値は駆血により産生されることもあり動脈採血が望ましいが、少なくとも静脈血の乳酸値が正常範囲内であれば動脈血の乳酸値も正常範囲内。

 

交感神経刺激症状でVIPアプローチ

V:十分な酸素化venti→O2投与

I:輸液infuse→リンゲル液500~1000ml輸液

P:血管作動薬pump→NAD

+ショックの原因検索。

 

必要に応じて挿管・人工呼吸器管理。

 

外傷患者では肘正中皮静脈が第一選択、早期に少なくとも18G以上の太さの静脈路を2本確保したい、輸液路の選択として末梢(上肢>下肢)→中心静脈(大腿、内頸、鎖骨下)→静脈切開→骨髄路の優先順(小児では骨髄路が第二選択)。皮膚温と頸静脈圧の2つを確認すれば心原性ショック、敗血症性ショック、循環血漿量減少性ショックの分類ができる。

 

原因不明なカテコラミン不応性ショックでは副腎不全を考える。

 

敗血症性ショックの診断:皮膚温正常~温かい、CRTが正常~良好。

 

心原性ショックの診断:頸静脈圧≧8cmH2O、肺野1/3以上でcrackles聴取、。

 

循環血漿量減少性ショックを疑ったら⇒眼瞼結膜蒼白の有無、細胞内脱水所見(口腔内乾燥・舌の皺の有無)、直腸診(便潜血)を確認し出血VS脱水を推測する。

 

神経原性ショックでは高位胸椎以上での脊髄損傷、腰椎麻酔、血管迷走神経反射の3つを考える。

 

速やかにエコーをすることで15分以内に最終診断できる可能性を50%から80%にすることができる。

 

輸液をして血管内容量を増やさないとNADで締めても何にもならない。

 

治療は血行動態に応じた対応を組み立てる。血管内volumeを評価しながら輸液、さらに心収縮力や心拍するも考慮したカテコラミンの使用。時には原因の除去が必要。

 

 

 

非特異的な所見が多い。

 ・Jugular Vein(の怒張の有無)

・呼吸補助筋(の使用の有無)

・末梢の冷汗・湿潤(の有無)

・CRT

・末梢動脈拍動

・四肢麻痺

 さえみればよい。

 

5P→suspect shock

①pallor②prostration③pulselessness④perspiration⑤pulmonary deficiency

 

shock+brady

・bradycardia arrhythmia・hypothermia・acidosis・neurological shock・hypothyroidsm・hyper K・Hypoxemia・drug

 

血圧

脈圧の開大と平均血圧に着目。

カテコラミン、特にβ作用が強くなる場合には、収縮期血圧が中心に上昇するので、脈圧は開大する傾向にある。収縮期血圧は一見正常だが、頻脈と脈圧開大が重なっている場合、カテコラミンが産生されるような状況(危機的状況)にあるのではないかと一瞬立ち止まって確認するのが良い。

収縮期血圧は左室後負荷、拡張期血圧は冠動脈血流、平均血圧(2/3拡張期血圧+1/3収縮期血圧)は心臓以外の臓器灌流に影響する。末梢循環を意識するなら平均血圧を意識する。臓器灌流の中でも、腎血流量の指標として尿量もバイタルサインとして評価が可能である。尿量0.5mL/kg/時以下で腎血流量低下を疑うのが一般的かもしれないが、救急での初期評価には不向きである。治療過程で臓器灌流の指標として経時的に評価するのが有用だろう。

 

MAP<75mmHgで糸球体濾過量低下。脳灌流圧を保つためにはMAP>60mmHgが必要。

 

Radial A = 80mmHg

Femoral A = 70mmHg

Carotid A = 60mmHg

 

脈圧の低下はショック徴候である。

 

ショックとは急激な全身の組織血液灌流低下により臓器障害をきたすこと。

低血圧sBP≦90mmHgが簡便な指標であるが、普段より30mmHg低い血圧も同様に扱う。

ショック状態における動脈拍動触知や間接的な血圧測定の信頼性は高いものではないので、血圧にとらわれすぎてはならない。

 

脈拍数

カテコラミン作用によるβ作用で頻脈になるのが一般的だが、おそいときもある。病態が予想できる。

おそい(徐脈)⇒心筋障害(特に伝導系の障害を起こす下壁梗塞、右室梗塞、それらの原因となる大動脈解離や洞結節障害、低体温、薬剤性、高K血症など)、副交感神経優位となる病態(脊髄損傷、コリン作動薬、脳幹損傷など)、ホルモン異常(甲状腺機能低下、副腎不全)を想起する。

 

Respiratory rate

乳酸貯留で代謝性アシドーシス代償のため深大性の頻呼吸。

 

意識状態

カテコラミンが放出されるような高ストレス下では不穏や興奮状態に陥り、いつもと様子が違うことはショックの初期症状ととらえる。

 

jugular vein

頸静脈は虚脱VS怒張

 

頸静脈が虚脱していれば前負荷が低下している(循環血漿量減少か血液分布異常)と考え細胞外液による補液を行う。

頸静脈虚脱⇒前負荷低下⇒循環血漿量減少(①出血②脱水(DKA、高Ca血症、急性膵炎を含む))

⇒輸液・輸血。

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頸静脈怒張があれば心原性ショックや閉塞性ショックが考えられ、原因を早急に解明する必要がある。

 

頸静脈怒張⇒心拍出量低下

・心原性ショック(①心筋障害②弁膜異常③心拍数異常)

・閉塞性ショック(①緊張性気胸②心タンポナーデ③肺塞栓)

⇒特異的治療。

 

末梢の評価

末梢はwarm VS cold。

末梢が温かい場合は血液分布異常性ショックと考え、カテコラミンの投与を検討

 

温かい末梢・紅斑・脈圧>30mmHg

⇒後負荷低下⇒血液分布異常

①アナフィラキシーや薬物副作用

②敗血症

③神経原性ショック

⇒輸液±カテコラミン。

 

RUSH exam(Rapid ultrasound in SHOCK).

Pump(心収縮能)

①   剣状突起下から心嚢液の有無を確認。心嚢液は少量でも急速に貯留した場合、心タンポナーデとなりうる。逆に慢性的な貯留の場合は大量でもショックに至らない場合も多い。必ずしも量だけで判断できない点は注意が必要。

②   傍胸骨長軸像で左室の収縮性を評価。左室全体を長軸で描出できるとよい。収縮が正常であれば、僧帽弁前尖が収縮期に心室中隔に触れる。大まかで良い。壁運動が前壁や心尖部など一部で低下している場合はMIに伴う心原性ショックを考える。

③   右室の拡張。正常であれば左室のほうが右室よりも径が大きいはずである。もし右室が左室と同程度の径か、それより大きいのであれば、肺動脈の閉塞=肺塞栓を考えることになる。四腔像を描出できると評価がしやすい。右心負荷所見の有無(D-shapeやMcConnell徴候)を確認する。

 

Tank(血管内volume)

①   IVC+RC。下大静脈の径は右房から2~3cm尾側もしくは肝静脈分岐部より1cm尾側で計測する。頸静脈の評価と一緒。水道ホースをイメージする。径が2㎝より小さく(虚脱)、呼吸性変動が大きければ(>50%)、中心静脈圧は10㎝H2O未満と考えられ、血管内volumeの減少が疑われる。循環血液量減少か血液分布異常を考える。逆に径が2㎝より大きく(怒張)、呼吸性変動が少なければ(<50%)、中心静脈圧は10㎝H2O以上ある。右心系に負荷がかかっていると考えられ、心原性や閉塞性ショックを疑うことになる。ただし頻呼吸のときには評価が難しいので注意が必要である。


②   胸水と腹水の検索。腹腔内出血の有無。FASTと同様に胸腔と腹腔のfluidを検索する。つまり、肝腎境界、脾臓周囲、膀胱周囲に液体貯留がないかを確認する。

 

③   肺エコー。エコーは空気を通過できず、基本的には肺は描出できないが、呼吸により動くはずの胸膜が動かなくなるsliding signの消失、Mモードでのバーコードサインがあれば気胸を疑うきっかけになる。またBラインと呼ばれる放射線状の高エコー所見は肺水腫や肺炎(肺胞が水浸しの状態)でみられるのでショック時にこれが認められたら、肺炎からの敗血症や心原性ショックを考える。

 

CI(collapsibility index)=(呼気相IVC径-吸気相IVC径)/呼気相IVC径 


Pipe(血管形態)

①    大動脈。腹部大動脈を心窩部から総腸骨動脈分岐部まで追跡し、大動脈径の拡大や解離を示唆するflapがないかを確認する。

②    下肢静脈。大腿静脈と膝窩静脈に深部静脈血栓が無いかを確認する。通常静脈はプローブで圧迫すると潰れるが、血栓がある場合は圧排されず虚脱しない。血栓が高エコーに見えることもあるので注意して観察したい。深部静脈血栓が存在することで、肺塞栓を疑うきっかけになるが、血栓が無いことを根拠に肺塞栓を否定することは不可能であるので注意したい。

・下行大動脈径(瘤の有無、flapあれば解離)
・大腿静脈(エコーのプローブで潰れない大腿静脈は深部血栓かも)

 

輸液

平均動脈圧を65mmHg以上に保つことが最も死亡率低下と関連する。

ただし大量輸液には気をつける。

 

血管内volume不足を認知したら輸液を始め、反応性を確かめるために頻回にエコーでIVC径をチェッする。

 

閉塞性ショックや心原性ショックのときに輸液をしても病態の改善には至らないため、一時的なしのぎのための輸液をしつつ、原因の除去を急ぐべきである。輸液のみで循環動態維持が困難である場合には、昇圧薬の使用を検討することになる。

 

昇圧薬

敗血症性ショックで血管拡張により相対的に循環血液量低下に陥っているような場合では、大量に輸液を行いつつ、早期に血管を収縮させて循環動態を改善させたい。こうした場合はノルアドレナリンがよい適応となる。

 

出血性ショックの場合は、基本的には輸液・輸血による循環血液量の担保が治療の中心となるが、輸液量が過剰となりそうな場合、血管収縮を促して循環動態を維持することはある。

 

なお、血管収縮作用を期待する場合にドパミンを投与すると、陽性変時作用により頻脈となる場合があり、また不整脈リスクが高まる危険も指摘されており、特に敗血症性ショックの場合には避けられている。逆に、その陽性変時作用に期待し、ドパミンを徐脈ショックの場合に使用する場合はある。

 

ドブタミンは難しい。敗血症性ショックの初期では、炎症性サイトカインの影響から、β1受容体のみに作用すると血管拡張作用のみを呈しかねない。血管内volumeが保たれており、末梢血管収縮のコントロールをしている状況においてもない、低心拍出が続く場合に、使用を検討することとなる。少なくとも、ERで第一に選択しない。

 

アドレナリンは心停止時の静注かアナフィラキシー時の筋注。それ以外で持続静注する場合には、かなり少量(0.05μg/kg/分程度)から慎重に投与する必要がある。敗血症診療においてノルアドレナリンで循環動態が改善されない場合に併用することはある。

 

カテコラミンではないが、バソプレシンもかなり血管収縮作用が高く、ノルアドレナリンだけでは循環動態の改善が認められない場合に昇圧薬として使用が考慮される薬剤である。ただし末梢血管収縮に伴い、末梢血流が低下するリスクも上がりかねないので、慎重に使用する。