誤嚥性肺炎治療

①感染症要素(市中肺炎や院内肺炎の起因菌と大差ない。口腔衛生状態の悪い患者で亜急性~慢性に発症する肺膿瘍や膿胸(すなわち膿をつくる)では嫌気性菌感染が想定される。嚥下機能低下患者では繰り返し抗菌薬投与を受けていて耐性菌リスクがあり院内肺炎でみるGNRが原因となる。ただし喀痰培養は咽頭の定着菌を見ているだけかもしれず良質な痰を提出する必要あり)②化学的要素(肺炎は胃酸などの化学物質による炎症であり誤嚥という事件の直後から肺炎像を作る。抗菌薬には反応しないため化学的刺激による炎症がおさまるまで待つ)③機械的要素(気道閉塞が解除されるまで抗菌薬の効果は弱い。治療抵抗性のもの、再発性のものには早めに気管支鏡検査を行う)。誤嚥性らしさがあるか(飲み込みが弱い、頻回嘔吐)★治療方針として、市中肺炎三大起因細菌+口腔内嫌気性菌を想定する。口腔内嫌気性菌はBacteroidesとは異なり、CTRXが有効な可能性があることに留意。確実にカバーするならCLDM上乗せなどを考える。ABPC/SBTが無難。治療として・ABPC/SBT(1.5~3.0mg 6時間ごと。BLNAR外れるので注意)、・CTRX(BLNARカバー+嫌気性菌カバー)、・CTRX+CLDM(BLNARカバー+確実な嫌気性菌カバー)、・TAZ/PIPC(BLNARカバー+嫌気性菌カバーだが、緑膿菌リスク高くないなら避ける)嫌気性菌は培養陽性になりづらく一般的に言われているよりも嫌気性菌を想定しておく必要がある。嫌気性菌を想定するシチュエーションとしては、・ADL低下/認知機能低下は誤嚥性肺炎発症のリスク。・脳血管疾患及び呼吸器疾患で有意差なし。・腫瘍性病変があるときも想定する。口腔内嫌気性菌には第三世代セフェム薬でもカバーが可能かもしれない。口腔内嫌気性菌として、・GPC(Peptostreptococcus属)、・GNR(Prevotella属、Fusobacterium属、porphyromonas属)。この中でPrevotella属はβラクタマーゼを産生する株が増加傾向の為、ABPC/SBTのようなβラクタマーゼ阻害薬を併用することやCLDMで治療することが必要となる。ただPrevotella属以外はCTRXに感受性があるため第三世代セフェムでの治療も可能である。ABPC/SBTだとBLNARカバーが不安定になるため重症じゃなくて待てる場合、誤嚥性肺炎に対してCTRXというのも選択肢と思われる。確実にカバーする場合はCTRX+CLDMを推奨、この場合はCDIに注意を。市中VS院内の要素のみではなく耐性菌リスクを考えて抗生剤選びを。抗菌薬耐性菌(βラクタム系(ABPC/SBTorCTRX)耐性かつマクロライド耐性かつキノロン耐性)のリスク因子は、・2日以上の入院歴、・免疫不全(PSL10mg/day以上相当)、・抗菌薬3か月以内の使用、・制酸剤の使用、・経管栄養、・車いす以下のADL、である。TAZ/PIPCを使うべきか迷ったときは上記リスク因子を参考にする。BLNARは基本的にCTRXが効く。LVFXやTAZ/PIPCも一応効く。誤嚥性肺炎の画像はベターっとしてる。胸水との違いはまず濃度が違うし、ベターっとした白い中に気管支像(air bronchogram)がみられたら肺胞の感染だとわかる。血液培養で何かの菌が検出されてても、誤嚥性肺炎っぽい像なら本当にそれが起因菌かどうか分からない。