Hbの酸素化はHb酸素飽和度SO2で表される。

 

赤血球液RBC:

末梢組織への酸素運搬能を改善する目的。

Ir-RBC-LR

Ir=放射線照射済み。放射線照射によりリンパ球の免疫反応を落とす目的。輸血後移植片対宿主病GVHD予防

LR=leukocyte reduced=白血球除去、白血球を前もって除去しておくことで輸血後発熱反応、アナフィラキシー反応、輸血関連急性肺障害(TRALI)を予防。

 

RBCの製造過程は

①採血された血液400mLを抗凝固剤CPD入りの空きバッグに入れる。

②白血球除去フィルターを通し遠心分離で血漿と赤血球液に分離する。

③遠心分離された血漿240mLを確保し冷凍6か月管理

→新鮮凍結血漿FFP-LR2「日赤」、有効期限採血後1年、融解後3時間以内に使用する。

④残った赤血球液に抗凝固剤MAPを加え約280mL

→赤血球液-LR2「日赤」、有効期限は採血後21日間。国内ではRBCとして2種類あり、Ir-RBC-LR1、Ir-RBC-LR2。

 

RBC-LR1は血液200mLに由来し1パック約140mL, Hb26.5g含有。

RBC-LR2は血液400mLに由来し1パック約280mLでHb53gを含有する。

ヘマトクリット(Ht)値は約70%程度。

とくに赤血球輸血の場合、21日間の有効期限があり、放射線照射3日目以降ではカリウム値が上昇するため高カリウム血症を避けたい場合は放射線照射後3日目までの製剤をオーダーする。赤血球輸血としてRBC-LR2を1パック投与することで止血されていてとくに出血していないケースでの貧血の改善の目安としてHb値1g/dL, Ht3%上昇がある。

 

RBCを輸血する際はABO型、Rh(D)型が同じものを用いる。しかし同型の血液型が入手できず、緊急で輸血する必要がある場合にはO型Rh陰性の血液をまずは輸血するが、このような超緊急事態は稀であり緊急時でも最低限ABO・Rhの血液型を一致させた血液製剤を使用すべき。

 

輸血製剤のCPDとMAPは抗凝固剤の名称であり含まれるものが違う。

赤血球を含め輸血を行う際に輸血ルートはあらかじめ0.9%食塩水を通しておく。乳酸加リンゲル液などバランス輸液はカルシウムを含み理論的にはチューブ内に凝血塊ができるため使用してはいけない。また5%ブドウ糖液は低張液であり著明な赤血球溶血がみられるため使用してはいけない。輸血を行うときはルートまたは側管に0.9%食塩水を流す。

 

大量出血が進行している外傷性出血性ショックや産婦人科手術・心臓大血管手術の場合は早期の血液製剤投与が重要であるが、出血が進行していない状態でクリティカルケアでの貧血のケースでの輸血目標としては、

Hb10以上→輸血しない

Hb9~10→経過観察し医原性に貧血進行しないようにする(採血回数を減らすなど)

Hb8~9→経過観察し下がっていくようなら輸血を考慮

Hb7~8→輸血を準備しいつでも輸血できるように

Hb7以下→輸血する。

 

ヘモグロビンを7~9gを維持するようにした輸血制限群のほうが10~12gに維持する以前からの輸血寛容群に比べ生存率の改善が示されている。とくに輸血寛容群の高い死亡率の原因として非感染性合併症とくに輸血関連免疫修飾(TRIM)の影響や病院内感染症合併などが考えられている。輸血=ミニ移植であり輸血の合併症および副作用が重視される結果となった。一方で、Hb値以上に赤血球輸血を行う意義として貧血の改善とともに組織の酸素化改善が大切であるため混合静脈血酸素飽和度(SvO2)や中心静脈酸素飽和度(ScvO2)の低下がみられる場合といったより生理的な輸血トリガーを考慮することが重要である。

 

輸血量=〈(目標とするHt)-(現在のHt)〉×循環血液量(mL)/赤血球(RBC)のHt。

 

成人の循環血液量は体重の約7%、または体重kgあたり70mLで計算する。ただし活動性の出血がある場合は必ずしも当てはまらない。活動性出血がある場合を除き、一般的にはIr-RBC-LR2 280mL1パック投与でHb1・Ht3%上昇を目安とし1パックずつ輸血し、輸血後に改善がみられたかどうかを判定するとよい。活動性出血が術後および多発外傷でみられる場合にはHb10以上、Ht30%以上、血小板10万以上、フィブリノーゲン150以上、aPTT/PT-INR1.5倍以下を目標にした輸血を考えるべき。

 

新鮮凍結血漿FFP

新鮮凍結血漿FFPには血小板を除くすべての凝固因子(とくにフィブリノーゲン)が含まれ、著明な出血の際には膠質液負荷としても選択される(FFPにはアルブミンが含まれ約4g、Na約150)。

 

FFP製剤は‐20℃以下で保存され、保管期限は6か月間。ほとんどの凝固因子は正常値の30%あれば止血機能が働くとされFFP-LR2の1パックが240mL(正確には血液200mLに由来するFFP-LR1 120mL、血液400mLに由来するFFP-LR2 240mLがある)であり、標準的な成人の場合2~3パック(10~15mL/kg)補充する。大量出血時にはさらに倍となる30mL/kgを目安として投与する。

 

副作用として、とくに①大量投与の時にはクエン酸中毒、低カルシウム血症、②ナトリウム負荷によるうっ血性心不全、③アレルギー反応、④輸血関連急性肺障害TRALIがある。またFFPは非加熱製剤のためウイルスの不活化が行われていないため、ウイルスなどの感染症を伝播する可能性がある。

 

使用時は30~37℃のぬるま湯にビニール袋などで覆って間接的に溶かすため30分程度かかる。また3時間以内に使用しないと凝固因子が失活するため融解後は早期に使用しなければならない。凍結された状態から迅速に解凍する目的で、ぬるま湯でなくお湯や電子レンジなどを使用すると製剤袋が割れて破損するため決してお湯や電子レンジで直接解凍してはいけない。

 

FFPの適応としては、

①大量出血への大量輸液による希釈性凝固障害

②肝硬変・肝不全で凝固因子不足、播種性血管内凝固(DIC)で大量出血時の凝固異常(フィブリノーゲン>100でもPT活性30%以下、PT-INR2.0以上、aPTT2倍以上の延長)

③抗凝固薬ワルファリン内服中の緊急補正

④大量出血、DICなどの低フィブリノーゲン血症(<100)

⑤血漿交換:肝不全、血栓性血小板減少性紫斑病TTP/溶血性尿毒症症候群HUS。

 

血漿交換時はFFP-LR480mLをまとめて使用する。

 

抗凝固薬ワルファリン内服中でINR3.0、体重70kgの脳出血のケースを例にすると、まずはビタミンK(ケイツーN®)10㎎投与とともに、FFP投与量は体重×15mL/kgとして「15×70」=1050mL≒FFP-LR2 240mL 4本となる。FFP投与までにかかる時間は、採血管の患者血液を遠心分離するのに5分、ABO式血液型判定に3分、ABO型一致RBCを記録・照合し出庫するのに2分、FFP融解に30~45分、FFP-LR2 1本あたり循環血液量過剰に注意しながら投与するのに30分×4本。すなわちFFP融解=投与までに40~55分、そして1本あたり心不全に注意しながらの投与となるため投与開始から終了まで約2時間かかることになる。そのため、緊急で止血目的で凝固因子投与が必要な状態ではFFPはかなりの時間がかかることになる。

 

緊急での止血目的でワルファリンを拮抗する他の方法としてプロトロンビン複合体濃縮製剤PCCが注目を集めている。