AmpC過剰産生菌

ESBLとの区別が大切。また両者が同居していることも多い。AmpCもセファロスポリン、特に第三世代のセファロスポリンに耐性を示すのが特徴でそこはESBLと似ているが、セファマイシン(CMZなど)を分解するのと、in vivoではクラブラン酸で阻害されないのが特徴。臨床現場ではそこでESBLと区別する。AmpCのポイントは、量が大事。ESBLはあるかないかが大切だが、AmpCはあるかないだけではダメ。実は1940年に初めて見つかったペニシリンを分解する酵素がAmpCβラクタマーゼ。AmpC遺伝子が臨床的に問題になるのはESBL同様腸内細菌科。ただ、腸内細菌科はAmpCを普段少量しか作っていないためβラクタマーゼもあまり壊さない。しかしながら、AmpCはβラクタム剤の曝露をうけると誘導され大量にAmpCを作るようになる。すると抗菌薬を分解する能力が高まり、臨床的にも耐性を示すようになる。つまり臨床的に問題になるのはAmpC産生菌というよりも、AmpC過剰産生菌である。AmpCが染色体上にあり、大量にAmpCを作ることがある。特に問題になるのはEnterobacter、Citrobacter, Serratia, Morganellaなど。またESBLと違いほとんどの腸内細菌科(Klebsiella, Proteus mirabilisを除く)染色体上にもAmpC遺伝子があってやはり大量にAmpCを作るようになることもある。E.coliも染色体上にもっているが現実には発現することは無い。ひとたびAmpCが誘導され、大量産生されると、各抗菌薬に対するMICがばんと上がり、薬剤耐性を示すようになる。つまり最初は効いていても、あるいは当初の感受性試験では感受性があっても、急に効かなくなってしまう。他にも遺伝子突然変異が急にAmpCが大量生産されるようになる脱抑制という現象も起きることがある。抗菌薬曝露時にはそのような耐性菌が選択されて急に耐性化したように見える。AmpCを誘導しやすいのはペニシリン、セファゾリン、セファマイシン、イミペネムなど。ただしカルバペネムはAmpC過剰産生菌でも効果あり。AmpCを誘導しにくいのは第三世代セフェム、セフェピム、アズトレオナム。ただし一旦誘導されると効かなくなるのは第三世代セフェム。要するに、第三世代セフェム使うときだけ、AmpCは臨床的な議論となる。βラクタマーゼ阻害薬はAmpC過剰産生菌の治療には適さない。AmpCを誘導するかどうかは、やってみなければわからない。そこで、AmpCを持っている可能性が高いEnterobacter、Citrobacter、Serratia、Morganellaなどが見つかったら、最初から第三世代のセフェムを使用しないでもっと広域の抗菌薬を用いるという専門家もいる。実際は耐性化はごく一部で起きないことがほとんどで大多数で治癒する。Morganellaなどの場合は、第三世代セフェムを使っても耐性化が起きないことがほとんど。AmpC過剰産生菌に対してはセフェピムは安定なのでいけるだろうと考えられている。フルオロキノロンも感受性があれば。カルバペネムはESBL同様信頼できるが乱用も考えると必然性が無いので使わない。患者さんの状態をみて判断する。急に容体が悪くならないようびくびくしながら。MICがすでにけっこう高かったり耐性を示しているならセフェピムを、最重症で死にそうなら他の耐性機構や菌が隠れていることも考えカルバペネムを用いる。


まとめ。

Enterobacter、Citrobacter、Serratia、MorganellaなどではAmpC過剰産生が問題。安定しているのはセフェピム、他のセフェム(セフトリアキソンなど)でもたいていは大丈夫。よく患者を診ること。