ESBL=Extended spectrum β lactamaseは基質特異性拡張型βラクタマーゼのことで広範囲のβラクタムを分解できる酵素のことである。このESBL産生遺伝子はプラスミドを介して異なる菌種間でも伝達する。ESBL=菌の名前ではない。正しくはESBL産生菌。ESBL産生菌に効く抗生剤=CMZ、TAZ/PIPC、MEPMであり、世間的にはESBL産生菌に対する第一選択薬はMEPMである。MEPMはESBL産生菌に対する治療エビデンスが最も蓄積されている。とある前向き研究では感受性のある他の抗菌薬VSカルバペネムの比較においてカルバペネム群の14日死亡率が低かった。一方でTAZ/PIPCの非劣性を報告する論文もありはっきりしない。MERINOtrialではMEPMvsTAZ/PIPCでMEPM群で有意に死亡率が低かった。しかし大腸菌の30%がESBL産生菌である現代においてMEPMを全て第一選択薬で使用していると、MEPM耐性株が増加する。実際、CREというカルバペネム耐性菌が増加してきているので十分現実味のある話である。ESBL産生菌に対して感受性があるのはCMZ、TAZ/PIPC、MEPM。ESBL産生菌に対して最も治療成績がよいのはMEPM。全てをMEPMで治療すると耐性菌の出現が問題になる。軽症例や尿路感染症、胆道ドレナージの済んだ胆管炎などはTAZ/PIPCやCMZで治療し、重症例やショックの症例はMEPMで治療する、というのが専門家内でのコンセンサス。ESBLカバーを保ったまま内服薬へ移行させたいシーンがある。例えば熱源不明の感染症で除外診断的に尿路感染症としてセフメタゾールで治療をして治療経過は良くなったが、培養で何も生えてこない。患者を退院させたいが、どの内服抗菌薬へ変更すればいいのか分からない…というとき。AMPC/CVAがESBLに対して感受性があることが比較的多い(まだCVAが対策されてないのかもしれない)。AMPC/CVAのESBLへの感受性は90%S 10%I。他の施設レベルでも感受性は保たれていることが多いよう。ビッグデータとしては未だ無し。GNRのUTI起因菌は腸内細菌系及び緑膿菌をはじめとするSPACEである。生で見た患者が重症でTAZ/PIPCだと不安だという場合はESBLのカバー率を上げる意味でMEPMもアリ。一方抗生剤投与歴もなく、耐性菌検出率もないという点からは緑膿菌が検出される可能性は低いし、外液負荷で血圧の維持ができているので最重症ではなくCMZで開始するというのもアリ。UrosepsisをCMZで治療開始するのは少し勇気のいることだが、起因菌は腸内細菌であることが多いのでやってみると普通に治る。CTRXがUTIのempiric therapyとして使われることがある。一昔前はESBLの頻度が低かったので大抵上手くいったが、現代ではESBLの頻度が高い(28%)。CTRXで7割は治療成功するが3割失敗することを知っておこう(第1~3世代セフェムは若い女性初発腎盂腎炎では効果的である。)。