腎膿瘍

ほとんどは菌血症から生じる。糖尿病症例では気腫性腎盂腎炎を生じ、腹部X線やCTで腎膿瘍の外にガスを認める。

 

発症は通常、非常にゆっくりであり、腎臓が感染巣であることがわかりにくいことも多い。尿路感染症が適切な治療にもかかわらず2~3日経過しても解熱しない。腎嚢胞が感染した場合には起因菌が尿中に出ず、無菌尿として表現されることもある。同様に膿瘍の空間が尿路と直接の連絡が無ければ検尿で白血球を認めることもない。

 

腎周囲膿瘍は尿路の狭窄、閉鎖を伴う尿路感染症に特に多い。こいつは死亡率が高い。

 

診断は臨床徴候と超音波。造影CTも有用。

 

尿所見:

菌血症から二次的に生じるタイプは腎皮質に膿瘍が存在し検尿は正常である。逆に腎盂腎炎から二次的に生じたものは腎皮質から髄質に至るので検尿も異常を示す。

 

原因菌は何を狙うか。

通常の腎盂腎炎の合併症として発症すれば、腸内細菌科が膿瘍の原因となる。また黄色ブドウ球菌が血行性に腎臓実質に感染した場合には、菌血症の合併症として表現される可能性もある。

 

切開排膿といった外科的処置を行わずに抗菌薬のみで治癒することも多い。黄色ブドウ球菌と腸内細菌科を基本的な治療対象とする。腎嚢胞が非常に大きく治療開始後5~6日経過しても反応がみられない場合には外科的処置も考慮する。

 

GNR⇒腸内細菌科細菌PEK菌血症かな?

・セフォタキシム1~2gを6~8時間ごとに緩徐に静注。

・ピペラシリン2gを4~6時間ごとに静注。

・ST合剤1錠を1日2回

 

GPC⇒黄色ブドウ球菌敗血症かな?

・セファゾリン1.5gを6~8時間ごとに静注。

 

*MRSA菌血症やβラクタムアレルギーならばVCM

*VREならばLZD。

 

腎周囲膿瘍は基本的には何らかの排膿が必要であり、多くの場合CTあるいは超音波ガイド下穿刺、排膿が可能である。穿刺排膿が失敗したら外科的処置。抗菌薬は腎実質内膿瘍と同様。

 

どんな時に腎膿瘍を疑うのか。

腎盂腎炎として適切に加療して72時間以内に解熱しない場合は合併症を検索することとなるが、その際、腎膿瘍、腎周囲膿瘍、腎嚢胞感染が見つかった場合の対応を考える。


腎膿瘍は3㎝未満では抗菌薬単独で治療可能であるが、5㎝以上の膿瘍ではドレナージが必要となる。


腎周囲膿瘍の場合も、直径3㎝未満であれば抗菌薬単独での加療も期待できるが、ドレナージや腎摘出の外科的治療併用群と抗菌薬単独群では外科的処置治療併用群の方が優位に死亡率が低いと報告アリ。腎膿瘍に比べ診断された時点で膿瘍が大きい場合が多く積極的なドレナージが推奨されている。


腎嚢胞感染は、直径3~5㎝のものであると抗菌薬単剤では成功しない可能性があり経皮外科的ドレナージを考慮する。また治療効果が悪い場合は腎嚢胞への移行性がよいニューキノロン系(シプロフロキサシン等)やST合剤の治療への変更を考慮する。


抗菌薬による治療期間は4~6週間行う。膿瘍が消失するまでかもしくは膿瘍が縮小し固定化されるまで継続する。腎嚢胞感染徴候や膿瘍が消失しない場合、解熱や全身状態の改善はもちろん、CRPや赤沈を指標にし、6週間以上治療を行っている段階で一度内服治療を中止しこれらが再度上昇しないのを確認して治療終了とする。治療中止後再燃するような場合には2~3か月以上必要になることもある。


まとめると、腎膿瘍・腎周囲膿瘍・腎嚢胞感染いずれにおいてもバイタル保たれ全身状態良好で3㎝未満であれば抗菌薬単剤でOK。ただ全身状態悪い場合や抗菌薬への反応が悪く高熱が持続する場合、免疫不全のある患者では積極的なドレナージを考える。特に腎周囲膿瘍ではドレナージを躊躇しない。腎嚢胞ある患者が腎盂腎炎に罹患した場合、腎盂腎炎に矛盾しない経過(72時間以内に解熱)であれば腎盂腎炎として治療し嚢胞感染は考慮しない。