郵便受けから何も盗まれていないことから、一時はどの罪状もつけることが出来ず、犯人の逃げ得かと危惧したが、辻井さんが何回も窃盗担当の上司に掛け合ってくれたおかげで”窃盗未遂”という罪状を犯人に突き付けることが出来た
それを聞いて、その日一日ずっと緊張の糸がピンと張っていた私は一度肩の荷が下りた気がした。。。
この2年間盗みを働いていた人間にようやく正式な罪が付与されたのだ。
これで、私だけがギャーギャー言っているのではなく、公に奴の犯罪が認められたのだ。
そうこうするうちに辻井さんもようやく郵便受けの指紋採取を終えた。
長かった。。。
一体何人の住民がこの現場を目にしまっただろうか。。。
”どうか指紋採が行われたことが犯人の耳に入りませんように。。。”
そう願うしかなかった。
罪状が決定したことで、辻井さんと大柄さんは一度署に帰って調書や被害届を出すのに必要な書類を作ってまた戻る手筈となった。
その時に、一緒に空のUSBを持って来て、私が録画した犯行現場の動画をコピーすることとなった。
一度取り出されて再び戻されたチラシは犯人の指紋が残っている証拠物品として二人が引き取った。
数時間のことだったが、久々に取り調べから解放された気分だった。。。
二人が署に戻った後、そういえば、と思ってスマホを確認した。
鯖子さんとアムロちゃんから返事が来ていた。
二人ともとても驚き、怖い!!!と書いていた。
また二人ともオバサンを見たことがないと書いてあった。
アムロちゃんは誰でも一度は利用したことがある有名な配送会社の午前配送の担当だった。
それでもオバサンを一度も見たことがないと言うのだ。。。
オバサンは結婚指輪をしていたから主婦業もしているはずだ。
であればアムロちゃんの配送業者からの荷物を一度は玄関先で受け取っていてもおかしくない。
なのにアムロちゃんが見覚えがないということは、マンションの住民ではないのだろうか。。。
"荷物が少ない人なのかもしれない。
顔は覚えたからこれから気をつけて見てみるね!”
アムロちゃんはそうメッセージに返事を書いてくれた。
鯖子さんも、
”怖い!
ゆあらちゃんに何かあったら大変だよ!
とにかく気を付けて!”
と心配してくれていた。
部屋で今日起きたことを反芻しながら犯行映像を見直した。
オバサンはチラシを取り出した後、郵便受けの前にしばらく立ってチラシの内容をしばらく見ていた。
帽子、首から下げたストラップ、目立つ結婚指輪、ストライプのシャツ、
といった首から下の特徴はばっちり録画されていた。
しかし、チラシを郵便受けから取り出す際に、通常の人達と同じようにかがんだ姿勢で短い間しか郵便受けの中を覗いていないので、そこに映った顔は一瞬だった。
タブレット上で顔が映った時に停止を押しても映像が乱れていてなかなかくっきりとした画像を得られなかった。
私のタブレットで映像を見た辻井さんと大柄さんも同じだったので、はっきりと顔が認識できず、二人とも痒いところに手が届かないといった表情をしていた。
ピロン!
そこへ、再び鯖子さんからメッセージが届いた。
メッセージを見てみると、、、、
ギョッッッ!!!!!
あまりにも不気味でスマホが手から滑り落ちそうになった。
なんと送られて来たのは、、、、
はっきりと写った犯人の顔の静止画像だった。