時期的にギリギリアウトな映画(地獄篇)ネタ、
サイトにうpるのための準備が面倒なのでこっちで。
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「グリムジョー、映画を観に行こう」
「ウルキオラ後ろ後ろ」
「俺は後ろじゃない、シファーだ」
「そうじゃねぇよ後ろ見ろって言ってんだよぉ!!」
自宮で平日にも関わらず二度寝を貪っていたグリムジョーは爆音で叩き起こされた。
寝室が煙や埃で白くなる中、現れた人物は飄々とポケットに手を突っ込んでいた。
「なんでてめぇは扉壊して入ってくんだよ!!」
「あぁ、少しテンションが上がってしまってついな」
「ついで扉壊してんじゃねぇよ!!」
グリムジョーは粉々になった扉の残骸を見やりながら、どうしてウルキオラは自宮の扉をいつも壊すのだろうと頭を抱えた。
確か前回は雪が降ったことに興奮して壊されたはずだ。(1日1ネタ1更新1/4参照)
「そんなことより映画を観に行こう」
「映画だぁ?」
「藍染様からチケットをかすめ取っ・・・頂いた」
「そうか、かすめ取ったのか。それで何の映画だよ?」
「劇場版BLEACH地獄篇だ」
「この時期に!?今この時期に!?12月公開で今もう2月だぞ!!」
「そうだ、今日で公開終了だ。だから行くぞ」
「マジかよ・・・」
グリムジョーはがっくりと項垂れながらも身支度のために立ち上がった。
「いらっしゃいませ」
「カップルデー割引で頼む」
「え、あの、女性は・・・」
「俺の隣にいるだろう」
「おいアホキオラ」
「何だグリム嬢」
映画館のコンセプションで受付を困惑させるウルキオラを、グリムジョーがイライラしながら振り向かせた。
「人を変な名前で呼ぶんじゃねぇ!」
「貴様だって呼んだだろう」
「とにかく、俺は男だ!!」
「・・・?あぁ、じゃあ俺が女で」
「そうじゃねぇんだよ!!チケット出せよチケット!!」
「そうだったな」
ウルキオラはやっとチケットを受付へ渡した。
「劇場版BLEACH地獄篇ですね、お席はどちらにしましょう?」
「Gの・・・「Uの4と6」
「は、はい。それではこちらをどうぞ」
ウルキオラは座席券を受け取ると、グリムジョーをきっと睨んだ。
「Gの4など・・・グリウルなど認めん」
そう言い捨てさっさとスクリーンへと急いだ。
グリムジョーもジュースを買いつつ、後へ続く。
既にUの4に座っていたウルキオラの隣の隣に陣取った。
「何故離れて座る?隣へ来い」
「てめぇが俺の席Uの6にしたんだろうが!!」
「Uの5にしたらウルノイになってしまうだろう」
「いいじゃねぇかよどうでも・・・」
グリムジョーは面倒くさそうにUの5に荷物を置いた。
「離れて座ったら『きゃっ!怖いウルキオラ!!』って貴様が抱きついてくるイベントが発生しないだろう」
「隣合っててもそんなイベント発生しねぇよ」
「何・・・だと・・・」
「ほら、映画始まるぞ」
微かに聞こえていたBGMが止まり、照明が暗くなる。
スクリーンが光が灯り雰囲気が一変した。
「(塔の上のラプン○ェル)おもしろそうだな・・・観に来るか」
グリムジョーはそんなことを思いながら、先程買ったジンジャーエールを飲んだ。
そうしているうちに予告が終わり、本編が始まった。
無音の中、黒と白の世界が広がり、完全虚化した一護と刀剣解放第二解放黒翼大魔のウルキオラが
文字通り死闘を繰り広げる。
翼をはためかせて空を舞うウルキオラは華奢でありながら大胆に戦う。
対する一護は有り余る力を持ってウルキオラを捻じ伏せ、腕をもぎ取る。
しかしながらウルキオラは表情一つ変えず、腕を超速再生する。
地に叩きつけられても、痛みも焦りも、憎しみさえも垣間見えないその顔はどこまでも無表情で、
ウルキオラをウルキオラたらしめている虚無そのものだった。
「・・・・・・っ」
観ているこちらのほうが堪えかねて視線を逸らす。
自分の闘いをウルキオラはどんな気持ちで見ているのか。
そっと彼のほうへ視線を向けると、そこには画面の中と同じように無表情があった。
光に照らされ陰影が変化していくその顔は、深い悲しみに満ちているようにも見える。
それから映画は進み、そしてクライマックスを迎えた。
エンドロールも終わり、暗く映画の世界になっていた館内が明るさを取り戻し観客を現実へと引き戻す。
映画を観終わった独特の達成感や爽快感にも似た心地よい疲労感を味わいながら、
グリムジョーは大きく伸びをした。
「行くぞ」
「・・・あぁ」
映画の冒頭のシーンのせいか、妙な気まずさを覚えウルキオラよりも少しだけ
距離を置いて歩く。
「ちょうど昼だな。何か食べて帰るか?」
「あー、うん・・・」
「・・・グリムジョー?」
「お、俺、ちょっとトイレ行ってくる」
覗き込んでくる翡翠の瞳から逃げるようにグリムジョーはトイレへ駆け込んだ。
大きく息を吸い込み、何度か深呼吸する。
そうすると少しだけ気分が落ち着いた。
「・・・戻るか」
鏡で前髪を直してからトイレを出た。
先程ウルキオラと別れた場所へ戻る。
しかし、ウルキオラの姿はなかった。
「ウルキオラ・・・?」
辺りを見回してもそれらしき人影もない。
急に不安に駆られる。
映画の様に砂塵と化して消えてしまったのか。
まさか。
誘拐?
それこそまさかだ。
脳裏に無表情のまま消えていくウルキオラがよぎった。
「ウルキオラっ・・・!」
「何だ」
平坦な声に振り向けば、そこには相変わらず無表情のウルキオラ。
「ウルキオラ・・・?」
「変な顔をするな。見ろ、貴様はトイレに行っている間に入場者特典のコミックスを・・・グリムジョー?」
一目があるにも関わらず自分を抱きすくめたグリムジョーを、ウルキオラは訝った。
「・・・勝手にいなくなってんじゃねぇよ、アホキオラ」
「・・・すまん」
不器用な彼の行動から、大体の気持ちを感じ取りウルキオラは静かに謝った。
その顔には和らいだ笑みが浮かんでいた。