昼下がり、読書をしている俺にエレノアが紅茶を持ってきた。
本を閉じ目を上げると、彼女がテーブルに紅茶と焼菓子、そしてはちみつを置いたところだった。
「珍しいな」
「今日ははちみつの日らしいので、取り寄せてみました。紅茶に入れてよろしいですか?」
「あぁ」
蓋を開け、はちみつを紅茶に入れる。
とろとろとした黄金色が紅茶の中に沈んで、容積が増していく。
「……多過ぎないか」
「え、申し訳ありません!ウルキオラ様にたくさん召し上がっていただきたかったのでつい…」
エレノアはシュンと頭を垂れた。
俺は今にも溢れそうなカップを掴み、啜った。
「……旨いな」
「本当ですか?」
「あぁ、甘くまろやかだ」
「良かった…早起きして養蜂場に忍び込んだ甲斐がありました!」
「……まさか、これはエレノアが…?」
「はい、私が採ってきました!」
だから朝は不在だったのかと納得した。
それはともかく。
「わざわざ自分で取りに行かなくても良かっただろう」
「はい、ですがどうしても朝一のものをウルキオラ様に差し上げたくて…今日は焼菓子もはちみつに合うようにしてみたんです」
「…確かにこれにもよく合うな」
「甘い物は疲れを取るといいますので、ウルキオラ様に是非と思いまして」
「俺が疲れているだと?」
「はい…最近お疲れのようですので」
「疲れてなどいない
きっぱり言い放つと、エレノアは少し目をぱちくりさせた。
「…お言葉を返すようですが、今お読みになっている本が逆さまです」
「…………」
俺は軽く息を吐き本を閉じた。
そして立ち上がる。
「エレノア」
「は、はい、何でしょうか?」
「此方へ来い」
ソファーに手招きし彼女を座らせ、俺はその膝に頭を乗せた。
無論、仮面が彼女に刺さらないようにして。
「ウルキオラ様?」
「俺は少し休む…子守唄代わりにこの本を読んでくれ」
「分かりました」
彼女はふわりと微笑み、音読しはじめた。
瞼を閉じるれば、エレノアの透き通る声とはちみつの甘い香りが心地良い眠気を誘う。
「……おやすみなさいませ、ウルキオラ様」
俺はそのまま眠りに落ちていった。