麻友と戦闘に参加するARは競技フィールドに、真一と連中は専用の席に、
そして参加しないメンバーは 観客席に座り皆が所定の位置に着いた。
観客席に座っている遥香と友美は友達だったらしく二人で話し始めた。
『遥香さんは、ARに詳しいらしいけど、真一さんのARをどう思います。』
『そんなに詳しいと言う程でもないけど、
 あのARは私たちが知っているARとはまったく別次元のARだと思いますが・・・。』
そして静哉は一独り言を言っていた。
『あの連中はARの技量と言うかスペックの違いも分からないのか?
 前の1戦を見れば自分たちのARが束になって戦っても勝てないって事に気づかないのか?』
裕二は誰とも話さずに、真一たちの戦いをカメラで撮ろうと準備をしていた。
そして先の1戦で負けた将司は自分のARに麻友と戦った感想を聞いていた。
『実際戦ってみてどうだった?』
『感想も何もゴングが鳴った事しか分かりません。
 次に起動した時には将司が覗き込んでいたので分かりません・・・。
 だからあの様な戦い方をしても到底勝てるとは思いません』
コンボは競技場の方を見ていた。

連中の悪巧みの準備が終わったみたいで
『こちらはいつでも良いぞ。』
『俺もいつでも良いよ。じゃあ頼んだよ』
『はい』
一言だけ返事をして一歩前に出た。

そして連中の一人が戦闘開始の合図のブザーを鳴らし試合?が開始された。
連中のARはどう言う作戦かは知らないが、半分が突進して来て残りの半分が扇状に広がった。
でも、そんなのは関係なく麻友は真一に言われた通りゲームの世界の動きをトレースし始めた。

麻友にとってはスローで動いている様なモノだろうけど、
俺たち人間からすれば凄い速さで、次々と技を繰り出しARたちを次々と戦闘不能にして行った。

その光景を見た遥香が
『私どこかで、あの技やこの光景を見たある』
すると、静哉や将司、裕二までもが同じ事を言い出した。
友美は
『こんな凄い光景、どこで見たのよ? そもそも、こんなの試合にもなっていないじゃない』
そう今競技場で行われているのは、試合でも競技でも、ましてや対戦とも言い難い光景だった。
現実世界のさまざまな摂理を無視した、ゲームの世界だからこそ出来る技などを
数々繰り出す麻友に、一方的にやれているゲームのデモ映像でも見ているかの様だった。
『こんなの現実で見れる日が来るとはね・・・。』
真一は違う所で感動していた。

観客席では遥香がある事を思い出していた。
『私、思い出した!』
『何を?』
『この光景と、ARが使っている技です。』
『どこで?』
『ネットの対戦ゲームで世界ランク1位の人と、
 それ以下の100人が変則マッチをしているのをネット中継で見た』
と言った瞬間、静哉・将司・裕二が一斉に『それだ!』といった。
『そのゲームで見た光景が、今見ている光景に似ていると?』
『そう。世界ランク1位のAR対100体のARと言う変則的試合。
 だけどその1体のARが一方的に試合を進め戦闘不能のAR山を築く光景。
 そして何より麻友さんが使っているあの技は世界ランク1位の人が使っていた技です。』
遥香は今まで見た事無いような興奮した様子で熱弁した。
静哉も
『俺も、あの世界ランク1位奴はチート使っているって噂になっていたから、
 どんな技を使うのだろうと思い試合を見た事ある』
それまで無口だった裕二が
『僕、その世界ランク1位と一度だけ対戦した事ある』
遥香や静哉は
『え!あるの?』
『うん。ランダムで対戦相手が決まる日にゲームをやっていたら決まった相手が
 あの世界ランク1位だった。』
すると遥香が興奮気味に裕二に尋ねた。
『で、どうだったの?どんな感じ?』
『試合は2秒で終わり・・・。その時の感想は・・・・。住む世界が違う。
 あんな動きチート使っても出来ないよ。
 それは、試合を見た事ある人なら誰でも分かると思うけど・・・。』

友美は真一たちの試合に目をやった。
『確かにあの動き・・・・。重力なんてまるで無視。
 私も詳しくは無いけど、架空の世界だからこそ出来る動きって事は分かるけど・・・。
 でも、麻友さんはしているのだから、それなりに調整すれば出来るわよね』
友美はディートに聞くとディートは申し訳なさそうに答えた。
『お嬢さま、申し上げにくいですが無理です。
 あんな事が出来るARは私の知る限り存在しません。
 私も恥ずかしながら、麻友さんの動きを真似て何かの役に立たないか計算しましたが、
 到底無理でした・・・・。』
友美は
『まぁ、将司さんとの試合で麻友さんが普通のARでは無いって事は分かっていましたが、
 皆さんがそこまで言うのでしたら、麻友さんには何か秘密があるのでしょうね』

友美たちがそんな話をしている間に試合はあっさり付いており、そこに立っていたのは・・・。
と言うか正確には飛んでいるんだが、動いているARは麻友一人だけになっていた。

麻友はゆっくり降りてきて真一の方に歩いて来た。
すると連中の一人が腹たち紛れに、真一たちの方にARの端末を投げてきた。
麻友は指の間で飛んで来た端末取ると、
『今、これを投げたのはどなたですか?』
ニッコリ笑って聞いた。
当然、誰も名乗りを上げなかったので麻友は端末をハッキングして持ち主を突き止め、
顔認識で持ち主突き止めて
『端末は投げる物ではありませんよ。お返しします。』
受け止めて居た手を振り下ろすと、衝撃波と共に端末は持ち主の1cm横をすり抜けて
壁に突き刺さった。
麻友は向き直るとそのまま真一の方に向かってまた歩き始めた。
端末の持ち主はそのまま膝から崩れ気を失っていた。
他の連中は自分のARに駆け寄り端末を操作してARを復旧させていた。

戻ってきた麻友は
『あの様な戦い方で宜しかったでしょうか?』
『うん、試合はあれで良かったよ。でも最後の端末を投げたのはちょっとやり過ぎだよ』
『でも、端末を真一さまの方に向かって投げたのはあちらです。
 私は親切にも狙いを外してあげたのに・・・・。
 本来なら真一に危害を加えようとする人は・・・・。』
『あー。解ったわかった、確かに連中も脅しになって良いかも知れないから
 あれで良かったのかもね。これからも、無闇に人を傷つけてはダメだからな』
『わかりました。』

他の連中はまだ競技場で何やらARをイジっていたが、真一は何もする事が無いので帰る為、
荷物ある教室に戻る事にした。