『どこから話したら良いか分からないから、麻友を見つけた所から話します。
 俺の家は裕福とは言えない家庭環境で中古のARすら買えなかったので
 学校などでも冷やかされて居た所に廃品置き場で解体されている麻友を見つけました。
 解体されているとは言え喉から手が出るほど欲しかったARが目の前にあったので
 貰って帰る事にしました。そして実際に家で組み立てる時に初めて可笑しな事に気づきました。
 素人の俺が見ても市販のARとは比べ物にならなくらいの高性能な部品の数々が使われて居ました』

『最初はもしかしたら国家機密級のARじゃないかと戸惑ったけど欲しかったARが
 そこにある現実には勝てなくて最後まで組み立てました。』
ここまで聞いた優作が疑問に思った事があったのか真一に質問をした。
『真一くん、質問なんだが、え~と麻友くんで良いのかな? 
 その麻友くんを一人で組み立てたのですか?』
『はい。気が付くと夜中でしたが・・・・。』
優作は驚きの表情を浮かべた。
『話を続けます。組み立てだけは出来たのですが、起動はしてくれませんでした。
 この時の俺はチャージステーションが無いからバッテリーが無いのだと思っていました。
 翌日学校があるのでその日は寝ました。』
『翌日、学校から帰って麻友を見てみると明らかに動いている様子だったので
 慌てて麻友をPCに繋ぎ解析を始めたのですが、
 プロテクトが掛かって居たのでそれをクラッキングして中身を見て隠しファイルを見つけました』

するとまた優作が
『度々話の腰を折って悪けど、父からその暗号システムは真一くんが、
 開発したモノだと聞いたのだけど私にはにわかに信用できないのですが・・・・。』
『そう言われましても・・・・。』
真一が困っていると善太郎が
『いくつか質問とテストをしてみて良いか?』
『良いですよ』
『それじゃあ、その真一くんが開発したと言う暗号システムのメカニズムを言って貰えないか?』
真一は普通に答えた。
すると善太郎は難しい顔をして自分の机から書類を出してきた。
『真一くん、これはあるテストなのだが、これを解いてくれないか?』
差し出した書類を見ると、プログラミングに関するテストだった。
真一にとっては小学生のテストを解いているかの感覚でスラスラと回答を埋めていった。

それを見ていた優作は
『お父さん、このテストって・・・・。』
『そうじゃあ、これはAI部のリーダープログラマの採用試験用のテストじゃあ』
二人が話している間に真一はテストが終わっていた。
『あの・・・・。終わったのですが・・・・。』
それを聞いた優作は
『お、終わったのですか?』
と驚いた。
『優作、すぐに採点しに行くぞ』
二人は解答用紙を持って部屋を出て行った。
残された真一は麻友に
『会長さんは俺にあんな簡単なテストをさせてどうするつもりなんだろう?』
『真一さま・・・・。真一さまはご自分の才能をどうお考えですか?』
『どうお考えですかと聞かれても困るけど、まぁ麻友を直せたって事は普通の人より
 ARの知識はあるんじゃないかな?』
『私は数日真一さまにお仕えさせて貰っていますから、ある程度解っていますが、
 あの方たちは今頃ど肝を抜かれている頃だと思いますよ。』
真一は自分の才能に完全に気づいていない様子だった。
麻友とそんな事を話していると善太郎たちが戻ってきた。

善太郎は帰ってくるなり
『麻友くん悪いけど、ちょっとの間ステルスモードになってくれないか?』
と言って来た。
『どうしてですか?』
『今から事情を知らない社員が入ってくるので、
 麻友くんが居るとちょっとマズイのだよ・・・・。 当然、真一の横に座いて良いから』
『麻友、ステルスモードに切り替えろ』
『わかりました。ステルスモード起動します。』
麻友は見えなくなった。
麻友がステルスモードになったのを確認してから社員を招き入れた。
『入ってきていいぞ』
するとラフな格好をした人が数人入って来た。
 善太郎は真一の前に座ると
『真一くんこれから見せる物は、次の我が社の新型ARのAIプログラムだ。
 だから、他言無用にして欲しいのだが約束出来るかね』
『良いですが・・・・。そんな物を俺に見せてどうしろと?』
『真一くんこれがワシからの最後のテストだ。』
『ここに新型のARに載せるチップがあるのだが、
 このチップでこのプログラムが動く様にするにはどうすれば良いか分かるか?』
真一にデモチップとプログラミング中のPCを見せられた。

すると真一は
『あの・・・。このチップの回路図はありますか?』
優作がインターフォンで
『ACV-2のVVTRの回路図を至急会長室に持ってきてくれ』
『じゃあ回路図が届くまでに、問題点を幾つか上げますね』
真一はPCを操作しながら善太郎に説明した。
でも、真一には疑問があった。
『会長さんちょっと良いですか?』
『なんだね?』
『ちょっと皆さんには聞かれたくない話なのですが・・・・。』
『解った』
善太郎は誰にも聞こえない距離まで近づいて来てくれた。
真一は善太郎の耳元で
『どうして、こんな簡単な事俺に解かすのですか? 
 本当の麻友の制作者の会長さんならすぐに解決する問題では無いのですか?』
『大きな入れ物に自分の好きな物を好きなだけ入れるのと、限られた大きさの入れ物に必要な物を入れるのとでは難易度が違うじゃろ』
真一はなる程・・・・。と関心している間に回路図が届いた。
それを見た真一は
『このチップに入れるのは無理です。』

するとラフな格好の社員が
『やっぱり子供に言っても仕方ないのですよ。
 君ね、大人の世界では無理でもしなくてはいけない事があるんだよ』
馬鹿にしてきた社員に向かって真一は冷静に
『そうですか。おじさんはアメリカまで自動車だけで行けと言われたら行くのですね?』
『なに、馬鹿な事言っているんだ? 常識的に行ける訳ないじゃないか』
『『大人の世界では無理でもしなくてはいけない事があるんだよ』と言ったのは、
 おじさんじゃあ無いですか?』
『出来る事と出来ない事があるくらい君でも分かるでしょ』
『だから、このチップでは出来ないって言っているじゃないですか。』
『じゃあ君が考える出来ない理由を聞こうじゃないか。時間の無駄だと思うけど・・・・。』
『そうですか。では説明しますね。』
すると真一は問題点を次々と上げていった。
『と言う事です。だからこのままでは無理です。
 もし、このスペックのままで動かしたいのなら・・・・。』
次は改善点と打開策を次々上げ説明した。
『とやれば、可能だと思いますよ。あくまで『子供』の意見ですが・・・・。』
イヤミを交えて言った。

『君は何なんだ? 僕が1年掛けても出来なかった事を10分・・・・。
 説明するから時間が掛かっただけで、本当は見た瞬間に分かっていたみたいな言い方だった・・・・。』
信じられない物を見たかの様にラフな格好の社員が言うと今まで傍観者を決め込んでいた善太郎が
『そこの君、このテスト何点だった?』
『私は60点でした。』
『そうか。君は優秀なんだな。このテスト50点取れれば合格点なんじゃ』
『でも、君が小馬鹿にしていたその子は満点なんだ』
それを聞いたラフな格好の社員は一瞬固まった後、優作の顔を見たが優作も頷いた。
するとラフな格好の社員は呆然と立ち尽くした。
『確かに君は優秀だと思う。だけど、上には上が居るんだよ・・・・。
 それに普通に考えてワシがそこら辺の学生に会社の機密情報を見せると思うのかね。
 人は見た目で判断するなと言う良い事例じゃな』
善太郎は笑った。