善太郎たちが立ち上がったのを確認すると真一は
『朝、会長さんには話しましたが、
 今回の一件に関しましては俺も悪い点があったのかも知れません。
 だから、皆さんがそこまで謝って頂く事はありません。
 でも、そこの鈴木さんには説明を要求します。』
 真一には睡眠薬で人を眠らせる気持ちが今ひとつ理解できなかった。
『どうして、俺に睡眠薬を盛ったのですか?』
『それは・・・・。』

鈴木のハッキリしない返答を聞いた善太郎は
『はっきり喋らんか!』
と怒鳴った。
するとようやく鈴木は重い口を開いた。
『君がARを使って会長・・・・。いや、会社自体を脅していたから・・・・。』
真一の頭の上にはクエションマークが乱舞して善太郎の顔を見た。
善太郎も意味が分かっていない様子だった。

真一は
『俺がARを使って会長を脅していた? どうして、そうなるんですか?』
『会長に頼まれたコーヒーを届けようと、ドアをノックをしようとした時、
 話し声が聞こえてきた。
 内容ははっきり聞こえなかったので様子を見ようとドアを少し開けると
 明らかに危険を感じるARが目の前に有って、それを見た会長の顔色が青ざめていた。
 次の瞬間、会社が停電になった。
 そしてそこの少年が何かを叫ぶとそのARは何かを止めたのか会社の電気は元に戻ったので
 あのARは隣に居る少年の物だと思った。
 だから、その少年が何かしない様に自分が使う為に持っていた睡眠薬をコーヒーを
 入れ眠らせた後に端末で停止コードを送れば助かると思って実行にしました。』
それを聞いていた善太郎は
『馬鹿者! その話が本当なら、殆どお前の妄想ではないか。
 一歩間違えば真一くんは死んで居たかも知れないだぞ! お前はその事分かっているのか?』
と怒鳴りつけた。

鈴木は、その場に泣き崩れたのを見て真一は善太郎に
『会長さん、俺が眠る前の事も皆さんには話したのですか?』
『息子には全部話が、そこの2人には詳しくは話していない』
『鈴木さん、昨日俺たちがここに来た本来の目的は頼みごとをしに来たのです。
 この麻友と言っても判らないか・・・。
 このARはこの会社の廃品置き場から持って帰った物を俺が組み立てた物です。
 見れば分かると思いますが、この外見では先ほどまでしていた様にステルスモードにしないと
 外を歩けないので、その事に関して会長さんに頼みごとしようと来たのです。
 だけど、俺も貰って帰ったARをそのまま組み立てれば問題無かったのですが、
 ちょっと改造しようと思いやっている内にやり過ぎたみたいで・・・・。
 だからこのステルスモードも俺が改造した物なのです。
 その事に関して会長さんに怒れているのを、何を勘違いしたのか 
 このARは会長が俺を攻撃するのでは無いかと思い防衛行動を起こした結果、
 会社を停電させてしまったのです。
 そして、鈴木さんも聞いた俺の叫び声、それはARに止める様に命令しただけです。
 だから、俺を含めARもこの会社や会長さんも脅してなんか居ないのです・・・・。』
嘘を可也混ぜて説明した。

そうすると鈴木は
『じゃあ・・・・・・。私の勘違い・・・・・・。』
放心状態になっていた。
『わ、私は何て事を・・・・・。どうすれば・・・・・・。会長、私はどうすれば・・・・。』
と善太郎を見たが善太郎は
『ワシに聞かれても知らんよ。まずは真一くんに謝るのが先決ではないか?』
『本当に済みませんでした・・・・・。私はどう償えば・・・・・。』
真一は別に鈴木をどうかしようとは最初から思っていなかったので
『これでやっと睡眠薬を盛られた事について解決しました。
 確かに勘違いで眠らされた事に関しては苛立ちを感じますが、
 勘違いとは言え鈴木さんも会長や会社の事を思ってやった事ですし
 本音を言えば事を荒立てると俺の方も色々面倒になりますので
 今回の事は無かったと言う事で・・・・。』
真一の発言にそこに居た会長を含め4人は唖然としていた。
『無かった事にして欲しいとは?』
と善太郎が聞いてきた。
『ですから、俺が睡眠薬を誰かに入れられて眠らされたと言う事件は無かったと言う事です。』
と言うと優作は
『それは・・・・・・。こちらとしても・・・・・・・。大変助かる事ですが・・・・・。』
突然の真一の提案に度肝を抜かれた様子だった。

『ワシらとしては、事を荒立てて欲しくないけど仮に事を荒立てたとしても
 真一くんが困る事なないだろう』
『確かに今回の一件だけを見れば俺に困る事は確かにありませんが、
 事に及ぶ経緯などを色々調べられると当然麻友の事が関係してきますよね? 
 それは俺にとっては非常にマズイ事なのです。
 それは何を意味しているかはここに居る皆さんなら分かりますよね? 
 それに、ある人がこの会社や会長さんの事を大切に思っているみたいで、
 何より、俺もこの会社の廃品置き場のおじちゃんにはお世話になっていますから。』
真一は善太郎の方を見て言った。

『だから社長さん被害届など出しませんので安心してください。
 そして秘書長さんもその辞表を下げてください。辞表を出す様な事は何も無かったのですから』
それを聞いた善太郎は頭を下げ
『ありがとう。本当にありがとう』
優作や田辺そして鈴木も同様に頭を下げ真一に感謝の言葉を述べた。
そして優作は用意していたと思われる封筒を真一に差し出した。
『これは何ですか?』
『いくら真一くんが許してくれたとは言え、部下のしたケジメはつけないといけない。
 失礼だと思うが慰謝料と言うことで・・・・。』
真一はその封筒を優作に突き返した。
『先程も言いましたが、許すも許さないもありません。何も無かったのですから。
 だから社長さんからその様な物を頂く訳にはいけません。』
真一は受け取らなかった。
『皆さんの気持ちは分かりましたから、この話はここまでにして頂けませんか? 
 俺はもっとしたい話があるのですが・・・・。』
すると善太郎は
『解った。真一くんがそう言うならこの話はここまでにしよう。
 じゃあ鈴木と田辺はもう帰っていいぞ』
鈴木と田辺はドアの前で一礼して会長室を出て行った。
そして残った真一・善太郎・優作、そして麻友だけに今後の事について話し合う事になった。

善太郎は
『じゃあ真一くんと麻友くんはそっちのソファーに座ってくれ』
善太郎は奥の部屋から缶コーヒーを持ってきた
『本来なら会社のコーヒーを出す所だが、昨日の事もあるのでこれにした。
 ワシが買ってきた物だから心配いらんよ』
と言って真一の前に数本の缶コーヒーを出した。
『先程も言いましたが、その事に関しては何とも思っていませんのでお気になさらず・・・・。
 緊張で喉が渇いているので遠慮なく頂きます。』
と言って1本缶コーヒーを貰った。
善太郎たちもそれぞれ手に取り飲み干した。

優作は先ほど真一が鈴木に話して内容で腑に落ちない事を聞く事にした。
『父も『真一くん』と読んでいるので私も真一くんを呼ばせて貰うけど良いかな?』
 真一が頷くと優作は話を続けた。
『それで、真一くん先ほど鈴木に話した内容と私が父から聞いた話では
 違うようだがそれはどうしてですか?』
善太郎も不思議に思っていたらしく
『そうじゃあ、確かに違っておった。真一くんの事だから何か意図があっての事だろうけど、
 どうして嘘をついたんだ?』
『確かに現時点では嘘ですが、これから本当の事になって行くのです。』
と言うと善太郎と優作は顔を見合わせ、そして優作が
『これから本当の事になって行くとはどう言う事ですか?』
『俺が知っている事は、社長さんも知っていると思って話して良いですか?』
善太郎に聞くと善太郎は頷いた。
『これから話す事は、会長さんでも初耳の事が有るかも知れませんが、
 全て本当の事であり俺の偽りない気持ちです。』
と前置きして真一は話し始めた。