学校に着き席に着くと、友美は真一の机の前に来た
『昨日はどうなされたのですか? どこか体調でも? 
 それとも、一昨日の事と関係でもあるのですか?』
『関係ないよ。昨日休んだのはどうしても外せない用事があったので休んだだよ。』
以前助けてくれた事もあり、友美に嘘を付くのは悪いと思い本当の事を言った。
『ズル休みとはよくありませんよ。その用事とは何ですか?』
まだ麻友の事を話すのはマズイと思い
『ちょっとね・・・・。もし話せる時が来たらその時話すから今日の所は勘弁してよ』
すると意外にも友美はあっさり引いてくれた。
朝、友美と話してからなぜか、あの連中がチョッカイを出しこなかった。
もしかすると友美が昨日連中に何か言ったのではないかと思ったが友美には直接聞かなかった。
理由は分からないが静かな1日を過ごす事が出来た。
終わりのチャイムの音が鳴り止む前に真一は学校を後にした。

会社に着くと真一は麻友を呼んだ。
麻友は既に到着していたらしく突然
『私はここです』
『わぁ!』
いきなり何も無い所から声が聞こえたので驚いていまった。
『以前、真一さまに言われたのでステルスモードで来たのですがいけなかったでしょうか?』
『いや、それで良いのだよ。ただ突然後ろから声を掛けられたのでビックリしただけだよ。』
『それにしても、この会社にはよく来るけど正面から入るのは初めてだ。』
『地図データーで位置などは知っていましたが実際見るのは初めてです。』
『麻友、会長さんに会うまではしゃべるなよ。何も無い所から声が聞こえたらみんな驚くから・・・・。』
『わかりました。』

真一は善太郎に言われた通り受付に名刺を渡すと受付の女性が
『真一様ですか?』
『はい。』
『会長から伺っております。少々お待ちになって頂けますか?』
と言い受付の女性はインターフォンで話し始めた。
暫くするとスーツを来た男性2人が真一に近づいてきた。
するとそこに居るであろう麻友の気配が変わったのが判ったので真一は直ぐに
『何もするなよ。心配ないから・・・・。』
周りに聞こえない様に麻友に言うと気配が普通に戻った。
気づくと2人の男性は目の前におり
『すみません。君が須賀真一くんで良いのかな?』
『はい。』
と答えると男性の一人が
『私は、この楠木グループ社長の楠木優作です。』
と言って真一に名刺を差し出した。
そして、もう一人の男性は
『秘書長の田辺です。』
と言ってもう一人の男性も真一に名刺を差し出した。

真一が名刺に気を取られていると優作が
『父が部屋で待っていますので、付いてきて頂いて宜しいですか?』
『はい』
優作の後に付いて会長室に行く途中、
優作を見つけると全ての人が頭を下げるのを見て本当にこんな事するんだ~。 
と思いながらも、それより上の会長をおじさん呼ばわりしていた俺って・・・・。
そんな事を考えながら歩いていると会長室の前に着いたらしく優作は会長室のドアをノックした。
『会長、真一くんをお連れしました』
すると部屋の中から
『そうか、入って来てイイぞ』
と善太郎の声が聞こえた。

真一たちが会長室に入るとそこには善太郎の他にもう一人男性が居た。
それを見た瞬間、真一はちょっとした恐怖と怒りの感情を抱いたが、
それ以上に反応したのが麻友である。
それは何も見えないはずの優作や秘書長の田辺も何かを感じたらしく辺りを見渡した。

真一は誰にも気付かれない様に
『俺は大丈夫だから・・・・。何もするなよ。』
 まぁ無理もない。昨日真一に薬を盛った張本人が目の前に居るのだから・・・・。

善太郎は
『真一くん、よく来てくれた。麻友くんも来ているんだろ?』
『はい。一緒に来てますが・・・・。』
『大丈夫だよ。そこに居る鈴木を含めて今ここに居る連中は事情を知っている』
そう言うと秘書長の田辺に目配せをした。
田辺は自分たちが入って来たドアを閉めて鍵を閉めた瞬間、
俺の横を何かが凄いスピードで駆け抜けた。
真一は瞬間的に麻友だと思い
『麻友やめろ!』
と叫んだ。

辺は静寂に包まれた・・・・。
それを破ったのは善太郎だった。
『急に悪かった。ちょっと配慮が足りなかったな・・・・。
 何も心配せんでも良いぞ。まぁそう言っても信用して貰えないかも知れないが、
 そこのドアの鍵を閉めたのは、これからする話しの内容を万が一にでも
 他の社員の耳に入れる訳にはいけないから念の為に締めただけじゃ。
 仮に私たちが何か企んでいたとしても、麻友くんなら一瞬で事をなすじゃろ・・・・。
 ワシもそのくらいは解っておる。だから麻友くんも警戒を緩めてくれんかの・・・。』
まだ見えない麻友に向かって語りかけた。

『ここに居る人たちは事情を知っているのなら、麻友はステルスを解いても良いですよね』
『そうしてもらえると、助かるよ。
 解っているとは言え見えない相手に話すのはしっくり来ないかな』
真一は麻友に
『麻友、ステルスモードを解除しても良いみたいだよ』
『分かりました。ステルスモードを解除します』
と言った瞬間、真一の横に麻友の姿が現れた。
善太郎は昨日見たし、何より自分が製作したので驚かなかったが他の人たちは驚きを隠せなかった。

『会長から話は聞いていましたが、実際見ると・・・。凄いですね・・・・。』
優作が言うと秘書長の田辺は
『そ、そうですね・・・・。』
マジマジと麻友を見ていた。

それぞれが驚きを口にした後、善太郎が
『真一くん、朝も話したが麻友くんの事について話したいから来てもらったのだが
 その前にもう一度謝らせてくれ』
会長を含め4人がその場で土下座をした。
『本当に申し訳なかった。
 謝って済む問題では無いのは分かっているがワシにはこうやって頭を垂れ謝る以外
 どうする事も出来ない。』
すると善太郎の横に居る優作が
『社員がした事は全て私の責任です。
 当然、この鈴木がした事は犯罪行為だと言う事も解っています。
 解っていますが、どうか訴える事だけは許して頂けないでしょうか? 
 自分勝手な事を言っているのも重々承知していますが、どうか許して頂きたい。
 私に出来る事ならどんな事でも致します・・・・。』
『私はそこの鈴木の直接の上司です。
 会長と社長が下げた頭に比べたら軽いのは承知していますが、謝らせてください。
 この度は本当に申し訳ございませんでした。
 この様なモノではどうにもならないのは解っていますが、これは私の謝罪の気持ちです。』
田辺は真一の目の前に辞表を差し出した。

自分の息子や娘、会長に至っては孫でも可笑しくない年の自分にこんなに
 頭を垂れる姿を見て何だか自分の方が悪いのでは無いかと錯覚した真一は
『皆さん頭を上げて下さい。これでは、俺の方が悪いのではないかと思ってしまいます。
 皆さんの気持ちは分かりしたから・・・・。』
それを聞いた善太郎は
『ありがとう。』
と言い立ち上がった。それにつられ優作たちも立ち上がった。