学校で唯一真一だけがARを所有してない事から、クラスでイジメに有っていた。
真一は学校に居てもイジメられるだけだから授業が終ると、早々に学校を後にして
廃品から自分で作り上げたPCに電源を入れるのが日課であった。
この日も真一はいつもの様にPCを起動させてネットゲームをしていたが、
飽きてきたので、いつも会社で要らなくなった物をくれる廃品置き場に行くことにした。
廃品置き場に着き辺りを見渡しても、いつも作業している、おじさんが居ない事に気づいたが
自分が居ない時でも廃品置き場にある物は勝手に持って帰っても良いと許可を得ているので
真一は見かけたら挨拶をすれば良いかと思い辺りを物色し始めた。
何か掘り出し物が無いかと探し居るとARの腕らしき物を発見した。
そして周りには、ARの部品が色々と破棄されて居て、
全てを集めると一体のARが完成しそうな勢い
真一は、これを組み立てて学校に連れて行けば、どんな反応をするかと思いながら
全て集めて見たがAR一体分の部品は相当の量になり、
ARの解体された部品をそのまま持って帰るにはさすがに
周りの目が気になるので、辺りに落ちていたダンボールに詰めて帰ろうとしている所に、
作業着姿のおじさんが来た。
その作業着姿の人こそ、この総合AR会社【楠木グループ】の会長【楠木善太郎】である。
だけど、会長の椅子に座って居るのが性に合わないらしく
いつも作業着姿でこの廃品置き場の周辺を徘徊しては、新しい物を作るアイディアを考えている。
でも、その事を知っているのは、会社でも限られた一部の人しか知らない事で
真一も知る由もなく、ただの廃品置き場の管理人くらいにしか思っていなかった。
真一は、善太郎に気付くと挨拶をした。
『こんにちは、おじさんが居なかったので勝手に欲しい物貰いましたよ。』
『おぉイイぞ。いつも言っているがココにある物はワシが居ない時でも勝手に持って帰ってイイからな。
それにしても真一くん今日は凄い量じゃな。どうやって持って帰るのじゃ?』
『いやー、一杯詰めたのは良いけど、どうやって持って帰ろうか悩んで居た所ですよ
数往復はしないと行けないかな~と。』
『何往復もするのは大変じゃろ。ワシが車で送ってやろう、少しそこで待っておれ』
と言うと工場の方に歩いて行った。
真一は、それを見送りながら、『助かった・・・。』と心の中で安堵した。
少し待っていると善太郎か、会社のワゴン車を乗って帰ってきた。
善太郎は運転席の窓を開けて
『真一くん待たせたな、荷物は後ろに積んで君は助手席に乗ったら良いよ』
と言いながら窓を閉めた。
真一はワゴン車の後ろに荷物を詰めると、助手席に乗り込んだ。
家に着くと真一は荷物を下ろし、善太郎に
『今日は送ってもらって、ありがとうございました。』
と言うと善太郎は
『イイのじゃよ。また欲しいのが有ったらおいで』
と言って車を出した。
会社に戻ってきた善太郎は、廃品置き場の整理をしているとある事に気づく。
自分が解体して捨てたはずの試作のARが無くなっているのだ。
直ぐに真一が持って帰ったのは分かったのだが、幾ら真一でも解体した
あのARを組み立てる事は出来ないだろうと思いほっておく事にした。
一方その頃、真一は持って帰った部品の山の前で思案に暮れていた。
市販のARならかなり分解されていても組み立てられる自信はあったけど
貰って帰ってきたARは既製品のARとは別物だった。
でも、真一は諦めなかった。
今まで高価すぎて自分では手も足も出なかったARが、分解されているとは言え目の前にあるのだ。
それに、学校で自分をイジメいる連中の鼻を明かす事も出来る。
まず比較的簡単そうに思える手足を取り付けようと思ったけど、
その手足の部分でも通常の物とはかなり違っており不明な部分が多すぎたが、
幸い関節の部分で外さていて配線等のコネクターを差し込み、
ボルトで取り付けるだけだったので予想よりは簡単に組み立てられた。
次に胴体部分に取り掛かって驚いた。
本来は頭部に配置されている手足などを制御するチップが胴体に配置され
そのチップも只者ではなくチップ1つでスーパーコンピューターの数百倍の処理能力を有する
『素粒子チップ』が搭載されている。
それを見た真一は
『おいおい、これ大丈夫なのか・・・。 まさか、国家機密・・・ って事無いだろうけど・・・。』
と不安に感じるが、好奇心の方が優って組み立てる事を止める事は出来なかった。
胴体部分と手足を悪戦苦闘しながら組み立てる事が出来たのは
運良く配線等は切られていたりはしたが、部品そのものは壊されて居なかった事が幸いした。
最後に胴体とドッキングする為に頭部を開けてみて又しても驚いた。
人工知能にあたると思われる所には『素粒子チップ』が数十個搭載されており
人間の記憶に当たるメモリー部分は、まだ実用化されていない『クリスタルメモリー』が
搭載さていたのだ。
真一はこれを見て
『これだけで、世界中のコンピューターを相手にしてもまだ余るくらいの処理能力があるんじゃないか?
本当に国家機密じゃないだろうな・・・。』
と思いながら胴体と頭部をドッキングさせた。
これで形だけは戻ったが、ここに来て大きな問題が一つ出てきた。
それはARを充電する為のチャージステーションが無い状況では、オブジェとしかならない
もしかしたらバッテリーの残量がちょっとくらいは残っているかもと思い試しに
PCに繋いでみる事にした。
ARは基本的にはAI(人工知能)により自立駆動しているのだが、
初期設定やカスタマイズなどの為に専用端末やPCに接続出来る様になっている。
本来なら無線などで専用端末などに接続出来るのだけど起動のやり方すら判らない状況で
無線通信で接続する事は出来無い。
そこで有線で繋ごうと通常は腰の辺りに有るコネクターポートを探したのだが、なぜか無い・・・・。
しばらく探して、やっとそれらしい物見つけたのだが、そのコネクターが特殊な物で
多くのARには『PBコネクター』(ペタバイトコネクター)と言う
光学レーザー通信用のコネクターが使われているのだが、
このARには『ZBコネクター』(ゼタバイトコネクター)が使われているのだ。
『ZBコネクター』とは『PBコネクター』の100万倍以上の通信速度を有する
大企業や国のメインサーバーに使われる物が使用されていた。
その様な特殊な物、普通は無いのだが、真一は以前会社の廃品置き場に捨てられていた物を
何かの役に立つかも知れないと思い拾っていたのが有ったのでそれでPCと接続する事にした。
市販のPCには『ZBコネクター』を繋ぐ所は無いのだが、真一のPCは自作で
部品の殆どが会社の廃品置き場からもらって帰って来た物なので
『ZBコネクター』を繋ぐ事が出来たのだ。
真一は自作のソフトを立ち上げてアクセスを試みたが全く反応しない・・・・。
電源すら入らないのだから当然と言えば当然だが、その後も色々試してみたが反応しなかった・・・。
そんな事をしていると時間が経つのを忘れたらしく気づくと時計の針はテッペンを越えていた。
真一は翌日も学校があるので寝る事にした。
朝目覚めてARを見てみると、ほんの少しだけ動いた様な気がしたのだが
電源すら入っていない状態では
勝手に動くはずも無く気のせいだろうと思い真一は学校に行く準備を始めた。