2ヶ月以上連絡がないので、もう会わないんだなと思っていた彼からラインがきた。


「元気?^_^」
相変わらずの、屈託のない雰囲気。

戦況はどうなの?と、私。

「ずっと気になっていた」とは言わない。気持ちが入ったら、ゲームは負けなんだ。感情的になったら、本気になってる証拠だから、そうしたらこの関係も終わりなんだ。


でも、私にそんな小器用なこと出来るの?私って、そんなタイプだっけ?

ともかく。
雨だと会社が抜けにくいというので、晴れの日の平日の昼下がりに会った。
会うやいなや、彼は私の持ち物を一瞥し、その目線の動きで、私はコンビニで飲み物を買っていないことをやはり後悔した。
買おうと思ったけど、ホテルの前にカフェ行ったりするかもじゃない。なんならご飯だけでもいいんだよ?…とは、思っても言えない。
前回は冬で、寒いので、温かいお茶を買っておいたら「なんだよ、あったかいのかよ」と言ってのけた彼。
今日、買わないでいたのは、あははと笑ったあの日の自分へのエールでもあったのだ。

少しいいことがあった。
いつもなら目的を果たしたら、さっさと会社に戻る彼が、コーヒー飲んでく?と言ってくれたのだ。
誘われて「行く!」と即答した私の声は、今考えても、さぞかし弾んでいただろう。
私にとって、コーヒー一杯一緒に飲んでくれる事が最大に嬉しいことなんて、考えたら、なんてささやかな幸せなんだろう。

そして、それなりに満ち足りた日々を送っている人にとっては、なんて馬鹿げた幸せであることか。


それでも、シングルマザーとして、4人の子を育てながら、不登校や引きこもりと対峙し続けてきた家の中で、「結果がでない」「誰も悪くない」そんな生活を、私は、必死にバランスをとっている。とれている。


犯罪を犯しているわけでもない。


コーヒー飲んでく?と言い出してもらえたことは、私にとって、小さな「成功」だ。

家の中ではなかなか得られない、この小さな成功は、脳から快楽物質がでて、忘れられないものとなる。


「じゃ、オレこっちだから。」
と、別れ際、駅構内で私の背中をちょんちょんと触る彼、うまいなぁ、今度ほかの男にやってみようと思えたことで、まだ私は、大丈夫。本気になんかなっていない。ゲームはto be continueだと思う。

帰って夕飯をつくる。
言葉少なに家族でそれを食べる。

そして23時、引きこもっている次男が家をでて明け方まで帰ってこなかった。