題名:Ranah 3 Warna(『三つの色の土地』)
著者:A. Fuadi
出版社:PT. Gramedia Pustaka Utama (2011年)


$インドネシアを読む-ranah3warna

前回に紹介した “Negeri 5 Menara”の第二部が発売されました。

主人公のプサントレン卒業後の奮闘記です。

当時はPondok Modern Darussalam Gontor(作中では Pondok Madani)を卒業しても高校卒業と同等とはみなされなかったため、大学に進学するためにはまず高校卒業資格試験に合格しなければなりません。プサントレンでは宗教教育が主で、普通の学科は普通校ほど勉強しないので、高校3年間の教科書を友達から借りて猛勉強に励む主人公アリフ。なんとかそれに合格し、息つく間もなく国立大進学のための統一試験に臨みます。

当初の夢だった工科大学進学は、理系の科目についていけないことを自覚して断念、国際関係学部を目指して、
「プサントレン出身者が普通の大学になんて行けるのか?」という友人たちからの揶揄をものともせず、志望どおりバンドゥンのパジャジャラン大学国際関係学部に合格します。

父からの贈り物の革靴をはいて、バンドゥンでの希望に満ちた大学生活が始まります。

ときには食べるにも事欠くほど金銭的には厳しい暮らしながらも、愉快な仲間たちと出会い、学生でありながらすでにプロのライターとして活躍している先輩のもとでジャーナリストとしての修業も始めて、充実した日々。向かいの
下宿に住む気になる女の子もいて…。

そんなときに父が病気だという電報が届きます。急ぎ帰郷してまもなく、父は帰らぬ人となります。

小学校の教師をしている母の稼ぎだけで、アリフの学費と生活費、ふたりの妹たちの学費を捻出するのは非常にきついので、アリフはなんとか経済的に自立しようと、家庭教師やセールスのバイトを始めます。それもなかなかうまくいかず、やがてチフスで寝込んでしまうアリフ。

心身ともにどん底に落ちてしまった中で、やはり物書きとして生きていきたいと決意をあらたにし、あまりの厳しさにいったんは弟子入りを断念した前述の先輩のもとに戻ります。そこで以前にもまさる猛修業の再開。そんな中、先輩が見せてくれたのは、思いがけないことに亡き父が生前にその先輩に宛てて書いた手紙でした。

地方紙から始まり、少しずつ投稿記事がメディアに掲載されるようになり、やがてアリフは母からの仕送りなしで学費と生活費を工面するという目標を達成します。

ある日、通学バスで偶然隣り合わせた女の子から、カナダはじめ数カ国に毎年派遣される大学生親善大使のプログラムの話を聞いて、さっそく応募。一次試験は難なく突破できたものの、二次試験は面接だけでなく、歌やインドネシアの伝統芸能の実技試験まであって、どちらも苦手なアリフは危機に陥りますが、プサントレンで学んだ演説能力を駆使して難関突破、カナダ行きの切符を手にします。

プサントレン時代からの夢だった北米大陸の大地をようやく踏みしめることができたのです。カナダでの6カ月もさまざまな出来事があり、すばらしい人々との出会いもあって、また、インドネシアへの愛国心にも燃えながら帰国した
アリフは、その2年後には無事大学を卒業します。

ずっと好きだった女の子がアリフの親友と婚約してしまって失恋はしたものの、それ以外は根性と辛抱とで着々と夢をかなえていったアリフ。そんなアリフを支えてくれたのは、プサントレン時代に教わったアラビア語の「マントラ」、
「真摯なる者は報われん」と「辛抱強き者は幸いなり」でした。

夢見る勇気だけを元手に世界に乗り出し、夢をつかんでいく、ストレートで爽やかな熱血スポ根ドラマです(スポーツじゃないけど)。こういうストレートなものがベストセラーになるというのは、喜ばしいことではないでしょうか。インドネシアの若者たちには、ぜひこんなふうにストレートにがんばってほしいものです。大人たちはロクでもないことばっかりやってますからね…。