題名:Indonesian Gold
著者:Kerry B. Collison
出版社:Sid Harta Publishers, Australia (2002年)


$インドネシアを読む-Indonesian Gold

ここのところ英語で書かれた作品が続いていますが、ついでにもう1冊。

前回紹介した “Crescent Moon Rising” の著者Kerry B. Collisonの手になる小説です。

1990年代半ば、ボルネオ島インドネシア領東カリマンタンで、カナダのBre-Xミネラルズ社の地質技師だった
フィリピン人男性がヘリコプターからジャングルに墜落して死亡しました。その二ヵ月後、世界最大の金鉱発見と
騒がれたBre-X社のカリマンタンにおける鉱山開発事業が、サンプル偽造による詐欺だったことが発覚します。

本書は、このアメリカとカナダの証券市場に大混乱を巻き起こした事件を下敷きとしたフィクションです。

本書では、ヘリコプターから墜落死するのは、美貌のフィリピン人女性技師シャロン。シャロンのおじはマルコス元大統領の片腕だった退役将軍で、旧日本軍が残したといわれる山下埋蔵金の一部をマルコスから託されていました。その膨大な金塊の存在を明るみに出さずに現金化するために仕組んだのが、カリマンタンの鉱山詐欺だったの
です。

この鉱山詐欺事件に、インドネシア大統領一族とその取り巻きや国軍の陰謀、先祖伝来の土地を守ろうとする
ダヤック族との攻防、ダヤックの族長の娘と米人地質学者との恋などが絡められて語られます。緊迫した場面展開の連続で、読みごたえがあります。

著者はオーストラリア軍人としてインドネシアで任務に就いていた経歴の持ち主だけあって、インドネシア国軍に
関する描写は詳細でリアルです。

インドネシアはこの手の物語のネタには事欠かない国だと思います。インドネシアの作家も、もっとこういう方面を
開拓すればいいのになあ…。