題 名:The Lost Syambel
著 者:Dan Bloon
出版社:Penerbit B-First (PT Bentang Pustaka), Yogyakarta
発行年:2010年4月


題 名:The Lost Simbok: Petualangan Orang Ilang yang Konyolnya Bukan Main-Main
著 者:Baim Lenon dan Kawan-kawan
出版社:Penerbit Edelweiss, Depok
発行年:2010年6月



ベストセラーにはそれのもじり本がつきもの。ダ・ヴィンチ・コードのときもいろんなパロディ本が出ていたようですが、ダン・ブラウンの新作ロスト・シンボルも例外ではありません。

一冊目、Dan Bloonの “The Lost Syambel”。

まず表紙を見てみましょう。なかなか凝っています。
左が本家 The Lost Symbol、右はインドネシア版パロディ。

$インドネシアを読む-Symbol-Syambel

著者名DAN BROWN が DAN BLOON に。

そのすぐ下の赤い丸。本家ではフリーメイソンの指輪の印章。
右は、なんとサンバル(唐辛子味噌のようなもの。インドネシア料理には欠かせない)。ちゃんとバジルの葉も添えてあります。
左では印章のまわりに溶けた蝋が固まっていますが、右は唐辛子。

その右側、本家では author of THE DA VINCI CODE
右では bukan sodara Penulis THE DA VINCI CODE(『ダ・ヴィンチ・コード』の著者の兄弟ではありません)。

印章の下、赤い三角の中。本家はアメリカ合衆国国会議事堂のドーム。
右はジャカルタのホテル・インドネシア前のロータリーにある Selamat Datangの像。

さらに右の本は、この画像には載っていませんが、実は銅像の右側の円形の中に
BEST SELLER INSYA ALLAH(笑)。

ついでに、右の本の背景に書かれている文字や絵は唐辛子やbawang merah(エシャロット)など、サンバルの材料です。

最後にタイトル The LOST SYMBOL と The LOST SYAMBEL。

本を開くと、本文が始まる前に、本家の方ではFACT:として、1991年にCIA長官の手で極秘に保管された文書があるのは事実であること等が書かれていますが、パロディ本でも、同じ体裁でFAKTA:として、おふざけが書いて
あります。

このパロディ本は154ページの薄い本ですが、パラパラめくってみると、ジャカルタ市内にあるいくつかの巨像の写真があったり、本家の本に出てくるようなダイヤグラムがあったり、一部(というか大部分)を黒で塗りつぶしたテキストがあったり、インドネシア独立宣言文の写真があったり、モナス(ジャカルタ中心部に建つオベリスク)の高さと幅を示す図があったり。これは意外とおもしろいかも、と期待が湧いてきます。

ところが読んでみたら……トホホホでした。
最後にサンバルの秘伝レシピに行き着くというのは、タイトルからも表紙の絵からも想像できるからいいとしても、どうせ遊ぶのなら、もっと徹底的に遊んでほしかった。

せっかくあれこれネタを盛り込んであるのに、結局それが問題の秘伝レシピにつながらずに終わってしまっているんですよね。行き着く先がただのレシピでも、ここは凝りに凝って、大げさに大仕掛けにやってほしかったです。

だいたい

$インドネシアを読む-proklamasi


これが本家の方に載っているアルファベット表を使って読み解くと
PROKLAMASI(宣言)になるって?
なりませんけど。PROKAMASGになっちゃう。
編集部でちゃんとチェックしなかったんでしょうか。

最後に出てくる暗号表も、なんか字数が合わないし。そもそも、せっかく絵と数字があるのに「絵は関係ないので、数字だけ見てください」って、そんな暗号表あり?

おふざけでも、もっと徹底してやってほしいところです。

さて、二冊目 The Lost Simbokは、表紙の雰囲気を似せているだけで、内容は本家とはまったく関係ありません。

表紙は、simbok(お母さん、おばさん)の後姿とモナス。

$インドネシアを読む-Simbok

副題に「ハンパじゃないほどおバカな迷い人の冒険」とあるとおり、都会で働く息子を訪ねて田舎から出てきたおばさんが、あちこちで騒動を巻き起こし、最後にはなぜかTVのトークショーに出て人気者になってしまうという話。

馬鹿馬鹿しいといっちゃ馬鹿馬鹿しいですが、まだこちらの方が「そんなんあり?」とがっかりしたりせずに、暇つぶしに笑って読める分、罪がないといえるかもしれません。

インドネシアの出版社って、結構寛大なのかも。