無駄な事はするな、と言う教え

 

 

ある親子の話です。

子供はタロウ君としましょう。

 

タロウ君が小さいときから母親に、

何かを希望すると

「それは無駄な事、必要ないこと。

 意味のないこと。」

と言われ続けました。

  

そして必要な事は勉強。

「勉強して立派なお医者さんになりなさい。

勉強以外に何が必要なの?

漫画とかゲームとか必要ないでしょ?

本は、夏目漱石とか宮沢賢治を読みなさい。」

 

タロウ君がスポーツをやりたくて

母親にサッカーがしたいと言うと

「あなたが入るべき大学は野球が有名でしょ?

サッカーなんかやっても、そこの先生方は誰も喜ばない。

サッカーに何の意味があるの?

それよりも野球をやりなさい。

その方が、大学に入るときに加点されるから。」

 

時が経ち、無事に 野球が有名な大学の

医学部に入学をしました。

そして医者になり、末は大病院の院長になりました。

 

その頃には母親も年を取り、

ついには施設に入ることになりました。

施設に入り早5年・・・

タロウ君、いやタロウ先生は

一度も母親に会おうとしません。

  

理由?

「忙しい上に、母親に会う時間が無駄だから。」

  

たしかに母親に会っても、病院の仕事の

効率が上がるわけでもありません。

医者としての勉強だって必要です。

何より院長は医療とマネージメントの

2つをやらなければなりません。

母親に会ったとして何の意味があるのでしょうか?

無駄な事です。

    

それから10年経ち、母親が危篤状態になりました。

施設の職員さんがタロウ先生にその事を伝え、

一度見舞いに来るように促しました。

  

「僕が顔を出したら、母さんは元気になるんですか?

元気になるわけでもないので、時間の無駄です。

母さんのケアは、そちらの先生やスタッフさんのお仕事ですよね?

何より、病院が忙しくて休みが無いんですよ。」

 

ついに母親が亡くなりました。

職員さんが連絡を入れると

「忙しいので、葬式を出しておいてください。

 私は念仏も葬儀に関する知識もありません。

 私が葬式に出ても無駄です。」

 

そして骨になった母親。

遺骨の引き取りをするように連絡をすると

「宅配便で送ってください。

 わざわざ引き取りに行くなんて無駄です。」

  

  

この母親の教えは、母親の身に返ってきました。

たしかに効率化によって

タロウ君は医者になり、院長となり

社会的に見て成功者となりました。

  

しかし、少なくとも母親に対する優しさは

どこかで無くしてしまいました。

あるいは、母親がタロウ君から

優しさを取り上げたのかもしれません。

 

無駄な事はするな。(=効率化

これは損得の教えです。

   

無駄の中には、

人が人として無くしてはならない事

多く含みます。

この無駄と言われることに、無想剣の本質が含まれている

事があります。

  

無駄と思う事を見つめる。

これは神の啓示によって得たという神夢想林崎流(≠英信流)や

心形刀流の本質も含まれていると想像が出来ます。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

武好会

 

毎週土曜日 15:00-17:00

亀井神社(神奈川県藤沢市亀井野554)

https://bukokai.jimdofree.com/