小姐に騙される日本人男(七) | 武漢の歩き方

小姐に騙される日本人男(七)

「あぁ、あんたも紅霞の男だろ。おたく騙されてるよ」



あまりにも突然のことに、何がなんだか訳が判らず僕は戸惑った。



「っていうか、あんた誰よ?なんで紅霞の携帯から電話してんの?」


「紅霞ならそばにいるよ。ちなみに俺、紅霞の彼氏だから」


「はぁ?何いってんだオマエ、紅霞はオレの女だぞ!」


「だから最初に言っただろ。君も俺も紅霞の彼氏なんだよ」



電話の向こうから女の声が聞こえる。中国語で何やら喚いているよう

だが、声の感じや状況からすると紅霞のようだ。



「君、さっきメールよこしただろ?そのとき紅霞の奴はシャワー浴びて

たんで、こっそりチェックしたんだけどな。ローマ字で送ってきてたか

らすぐに日本人だって判ったよ。ところが、送信者の名前が中国人み

たいな名前で登録されてたから、こりゃおかしいと思ってさ。調べてみ

たら案の定だ。まぁ、うすうす騙されてるかもしれないと思ってたから

やっぱりそうだったっていうだけの事なんだけどな」



紅霞がシャワーを浴びているとき?なんで・・・紅霞は日本人男と一緒

にいるんだ?



「信じたくないなら別に構わないけど、これが事実だから。詳しく聞き

 たいならいろいろ教えてあげるけど。どうしようか?」


「・・・・・とりあえず、彼女に代わってほしい」


「あぁ、いいよ」



中国語で何かを言ってるのが聞こえる。意味は判らないが、ものすご

い勢いで女が男に向かって喚いている。



「電話に出る気ないみたいだぞ。まぁ、俺だけじゃなくて君にもバレちゃ

ったからな。ところで君はこの女にいくらやられた?」 



僕は紅霞の彼氏で、電話の日本人男性も紅霞の彼氏で、しかも今

紅霞と一緒にいて、紅霞がシャワーを浴びているときに僕がメール

を送って・・・・・


頭の中が真っ白になるっていうのは、きっとあのときのような状態を

いうのだろう。僕は必死で頭を働かそうとはしてみたものの、正常に

動いてはくれなかった。



「俺はもうこの女とは終わったから、あとは君のしたいようにすれば

いい。付き合うなり別れるなり好きにしなよ。でも他にも男がいるみ

たいだけどな。どうしようもねぇよ、この嘘吐き女」


「・・・・紅霞と話しがしたいんですけど」


「電話に出ようとしないんだからしょうがないだろ。そんなに話がした

きゃ、君がこっちにこいよ」



僕は彼らのいるホテルの場所を聞き、そこへ向かった。


彼らの元へ向かう間、僕はずっとこれが何かの間違いであって欲し

いと願っていた。状況から鑑みて、明らかに僕は紅霞に騙されてい

たに違いないのに、それでも心のどこかで彼女を信じたいという思い

が強く残っていたのだ。



ところが事実は残酷だった。


まず、彼の部屋に行ったときには、紅霞は既にどこかへ行ってしま

っていて、彼女の携帯に何度も電話をかけたが出てくれず、仕舞い

には電源を切られてしまった。


ゴミ箱には使用済みのコンドーさんがティッシュとともに捨てられて

いたのも見た。(というか見えた)


日本人男性のSさんの携帯電話には紅霞の電話番号はもちろん

のこと、メールのやり取りがあったことを確認した。


紅霞が僕から金を騙し取ったときの手口と、Sさんを騙したときの

手口が、金額はちがったものの似通った手法だった。(病気のお父

さんは叔父さんになっていた・・・・・)


とまぁ、出てくるわ出てくるわ・・・・・。


そして初対面の人の前で、僕は生まれて初めて涙を流した。


そんな僕を哀れに思ったのか、Sさんは「騙されたモン同士で今夜

は飲まないか?」と僕を誘い、普通ならまず断るこの申し出を、僕

は了承した。



「・・・・・・Sさんは、なんでそんな平然としてられるんですか?」


「ん?別になんてことないだろ。小姐なんて皆あんなもんだよ」


「・・・・・・・・。」


「あの女は普通の小姐よりズル賢い女だったけどな。でも、基本

的に中国小姐なんてのは、日本人騙してナンボだから」


「でも、Sさんも紅霞とつきあってたんですよね?腹立たないんで

すか?」


「ん~、別に立たないかな。まず、中国人って奴に何も期待してな

いし、何よりも初めから信用してないからね。こういうこと君に言う

のは酷かもしれないけど、騙される奴がバカなだけだよ。俺も含め

てだけどね」



そのときに僕はSさんから学んだことは大きかった。


期待したり、信じるからこそ、裏切られたときにショックを受けるん

であって、初めから何も信じなければいい・・・・・。これぞまさに中

国人とうまく付き合うための最良の方法だ。



「それに、君に全部バラしたって事で、俺はアイツに仕返ししてやっ

た訳だし。君にしてみれば余計なことだったかもしれないけど。だ

から君のこと何だか気の毒に思えてさ・・・・悪かったね」


「いや・・・・オレも真実を知ることができて良かったです」


「そう言ってもらえるとね・・・・・。そういや紅霞の奴『なんでバラすん

だよ!』 ってすげー怒ってたよ(笑) 」



結局、その後に紅霞と連絡をとることはなかった。口も聞きたくなか

ったし、真実を知ってしまった以上、今さら会ってどうするというのが

正直なところだった。



奇妙な巡り会わせではあったが、Sさんとは今でも連絡を取り合っ

ている。紅霞が僕に残してくれた唯一のものは、Sさんという人脈だ

った訳だが、意外な事に、このSさんとの縁は僕にとって非常に大

きなものとなった。


Sさんは「俺とbukan君は互いに高額な紹介料を支払って出会った」

と笑うが、もしかすると本当にそうだったのかもしれないなんて、近頃

では僕も思っている。




そんなこんなで中国小姐に騙された“可愛いbukan君”の話はこれで

終了。今ではすっかり悪党(?)が板についたというか、小姐騙して遊

んでますが(笑)


気が向いたら、また小姐との恋愛(悪い日本人バージョン)なんかも

書いてみようと思います(* ^ー゚)



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