小姐に騙される日本人男(五) | 武漢の歩き方

小姐に騙される日本人男(五)

「ごめんなさい。またお店で働かなくちゃいけなくなった・・・・」


「なんで?どういうこと?」


「弟を大学に行かせてあげたいの。でも昼間の仕事もまだみつから

ないし、お金がないから・・・・。ごめんなさい」



弟を大学?いったい何を言ってるんだ?紅霞の親は何をしてんだ?



「弟を・・・・って、君のお父さんは何をしてるの?」


「お父さんは身体が悪いから仕事してない・・・・。だから私が働かな

いといけないの・・・・」


「・・・・なんだよそれ。とりあえず、オレがそっち行ってからまた話そう」




北京についてから紅霞と最初に話したことは、弟の大学の件だった。

大学の入学金や学費、寮費などをあわせると5万元以上すると彼女

は言った。


今の僕なら「そんな高い訳ねーだろ!」とぶち切れること間違いなし

だが、あの当時の僕は彼女の話を疑いすらしなかった。大学に行く

お金といっても、日本に比べれば全然安かったし、また何よりも中国

に関して知らなすぎた。


まぁ、それが原因で騙されることになったわけだが、当時の僕は家

族のために、弟を大学に行かせるために必死で働こうとする紅霞を

素直に凄いと思っていた・・・・。



「じゃあ、その金はオレが何とかするから、夜の店で働くのは止めて」


「ダメだよ。こんな大きなお金は頼めない・・・・。私はお金が欲しくて

アナタの彼女になった訳じゃないからダメ・・・・」


「別に金目当てだなんて思ってないよ。ただオレが紅霞にお店で働

いて欲しくないから、弟の学費をオレが出すっていってるの」


「・・・・ありがとう。・・・・私のこと嫌いになった?」


「なんでよ?(苦笑」


「アナタとした約束を破ろうとしたから・・・・・」


「家族のためだろ。仕方ないよ。それよりも紅霞のこと“凄い” って

思ったよ。弟を大学行かせたいから水商売で働く女性なんて、 い

まの日本にはいないだろうね・・・・・」



本人の口から『お金が目当てじゃないから頼めない』と言われたこと

もあって、僕は100%紅霞を信用した。そしてお金は僕が次に北京

に来たときに渡すことになった。




紅霞はプロの女優が顔負けするほど演技が上手かった。また、他人

の心理状態を読むのにも長けていたと思う。僕がちょっとでも疑ったり

不審に思ったりすると、いろんな手を使って僕を信用させていた。時に

は自身の行動で、また時には自分の友人を使って僕を騙した。


嘘をつくときも単純な嘘ではなく、慎重に伏線を張り巡らしながら、準

備を整えてから嘘をつく・・・・。惚れていた分を差し引いたとしても彼

女のつく嘘は見事だった。



例えばこんなこともあった。


紅霞と交際を続けている間、僕が一番腹が立っていたのは、他の男

からかかってくる電話だった。彼女はいつも中国語で喋るため、何を

言っているのか判らない。また、日本人からかかってきても中国語

で話をするので、電話の主が日本人なのか中国人なのかも判らな

いという始末だった。(会話の中で日本語が出た時だけ相手が日本

人だと判るぐらい・・・・)


彼女は電話をかけてくる日本人は、店で働いている友達のお客さん

(または友達の彼氏)と言っていた。僕もさすがにそんな嘘には騙さ

れないゾ!と本気でキレたことがあったのだが、そのとき「嘘だと思

うなら自分で聞いて!」と携帯を渡された。


メモリの中には日本人らしき名前があったが、さすがに電話をかけ

るのは・・・・とひいていると、紅霞は僕の手から電話を引ったくって

自分から電話をかけだした。


「私の彼氏が信用してくれない。アナタは私のただの友達って彼に

言って!」


そう言うと、僕に携帯電話を投げてよこした。恐る恐る電話に出ると

日本人らしき男が「私と彼女はただの知り合いなんで、気にしないで

くださいね(苦笑」と言っていた。


そしてまた僕から携帯電話をもぎ取り、今度は違う日本人に電話を

かけだし・・・・と同じことを何度も繰り返した。


僕は「もういいよ」と言ったのだが、紅霞は言うことを聞かず、結局は

メモリに入っていた日本人全員に電話をかけた。


まぁ、途中から僕も面倒くさくなり相手にしていなかったので、彼女

が一方的に電話をかけて、僕に代わろうとするけど僕はでないって

感じだったが。たしか7~8人はいたと思う。


ここまでされれば、普通の男だったら女を信用するかと思うのだが

どうだろうか?



実は後で判ったのだが、メモリに日本人の名前で登録されている人

物は、本当にただの知り合いで、自分と関係のある男は中国人のよ

うに二文字で登録されていたのだ。


例えば『鈴木一郎』なら『鈴郎』、『小泉純一郎』なら『小純』のように。

彼女に会っている時だけ、その男は『宝貝』に名前が変り、彼女が

また別の男に会うとき、再び二文字名に戻る。


普通の中国人が4~5文字の名前をみると日本人だと思うように、僕

も2文字の名前は中国人か韓国人だと思っていたので、これには見

事に騙された。



※宝貝:「私の大切な人」の意味。中国のカップルはよく使う。

  語源は「DEAR MY BABY」らしい。




弟の学費はまだ序の口・・・・・。それからしばらく経った後、詐欺師

顔負けの手口で僕はやられたのであった・・・・。




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