小姐に騙される日本人男(四) | 武漢の歩き方

小姐に騙される日本人男(四)

僕は日本に戻るなり、すぐ航空券の手配をした。翌週の北京行きの

チケットだ。ほんの何日か前には、こんなことは予想もしていなかっ

たことだが、僕は北京から戻って五日後にまた北京に行く。


ありがたいことに、従業員たちは不審に思っていないようだった。ただ

中国語の喋れない僕が、一人で中国へ行くことをとても心配してくれ

ていた・・・・。


・・・・遊びに行くなんて口が裂けても言えない (-_-;)



ところが行く直前になってあることに気づいた。そう・・・・ビザを取り忘

れていたのだ。いまでこそ15日間以内の短期滞在の場合、ビザは不

要となっているが、当時はビザが必要だった・・・・。


手配した航空券を一旦キャンセルし、ビザの申請をして、再度航空券

を手配するという、何とも無駄なことをするハメになり、結局北京に入

ったのは紅霞の誕生日を過ぎてからとなった。



北京では、空港に紅霞が僕を迎えにきてくれていたので、別段迷った

り困ったりすることもなく、無事にホテルに着くことができた。



「疲れたでしょ?マッサージしてあげるから、ベッドに寝て」


「いいよ、マッサージならマッサージ屋に行けばいいじゃん」


「私がマッサージをしたいの。私に会いに来てくれたんだから」



紅霞はそう言うと、僕をベッドに押し倒してマッサージを始めた。こんな

優しい女の子は日本にもいない!と一人で悦に浸っていた。


紅霞がマッサージを始めて5分くらい経ったころ、彼女の携帯電話が

鳴り出した。電話に出た彼女は、僕に声を出さないでと合図をして、部

屋のテレビをつけ、中国語でしゃべり出した。


テレビの音が邪魔をして、電話の声の主が男か女かも判らなかったが

時折日本語を交えていたので、たぶん店の客かなんかだろうと僕は思

った。



軽く10分は電話をしていただろう。待っている間、僕はちょっとイラつい

ていた。彼氏が日本からやってきたばかりなのに、仕事とはいえ長電

話するなんて・・・・。


そんな雰囲気を察したのか、紅霞は慌てるようにして電話を切った。



「ごめんね・・・・お客さんからの電話だったから」


「まぁ、しょうがないとは思うけど・・・・・もうちょっと考えてね」


「本当にごめんなさい・・・・」



僕は謝って小さくなっている紅霞に、彼女への誕生日プレゼントにと

日本で買ってきたヴィトンの鞄を手渡した。ヴィトンといってもスピー

ディーなので、安くはないがそんなに高いものではない。



「え・・・・これって本物?」


「彼女の誕生日に偽物プレゼントする奴がどこにいるんだよ(苦笑」


「中国はいっぱいいるよ。・・・・高かったでしょ?」


「まぁ、安くはないけどね」


「ありがとう!嬉しい!」



素直に喜ぶ紅霞をみて、僕も嬉しくなった。


ただ、今にして思えば、こういった僕の行動が裏目に出たのかもし

れない・・・・・。



2回目の北京では、昼間は紅霞と一緒にデートをして、夜は紅霞の

店に飲みに行き、僕は先に一人で部屋に戻り、店が終わると紅霞が

ホテルにくるという感じで一週間を過ごした。


紅霞と一緒にいる間に、彼女の客らしき男性からは何度も電話がか

かってきていたし、どうやら店にもきていたようだ。ただその電話が同

じ男からなのか、それとも複数の男からなのかは判らなかったが。



帰国する前日の夜、僕は思いきって紅霞に相談をした。



「あのさ・・・店って辞められないかな?」


「どうして?」


「仕事でも紅霞が他の男と一緒にいるのが嫌なんだよ。だからできれ

 ば夜の仕事じゃなくて、普通の仕事とかしてもらいたい」


「昼はお給料が安いからダメなの。私はお金がないから」


「いまは一ヶ月いくらもらってるの?」


「1万元ぐらい」


「昼間の仕事だといくらぐらいもらえるの?」


「通訳とかガイドの仕事で2千元ぐらいだと思う」


「いくらあれば生活できるの?」


「一ヶ月で8千元は必要。親にもお金を送らなきゃいけないから」


「じゃあ、オレが6千元だすよ。だから店をやめてくれないかな?」


「うん。いいよ」



毎月6千元は痛かったが、当時の僕はそうまでして紅霞に店を辞めさ

せたかった。また、月に一回北京に来るとして、来るたび紅霞のいる店

に飲みに行くことを考えれば、実質2千~3千元しか渡さないのと変わ

らないとの試算もあったからだった。


そして、僕は日本に帰国した。



日本に帰ってから、僕は毎日紅霞に電話をかけた。彼女は約束どおり

店は辞めたが、昼の仕事がなかなか見つからないとぼやいていた。


そんな調子で1ヶ月が過ぎ、また北京まで紅霞に会いに行くという前日

の夜、紅霞に電話をかけると彼女の様子がなんだかおかしい・・・・。

心配に思って何度も訪ねると・・・・



「ごめんなさい。またお店で働かなくちゃいけなくなった・・・・」




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