5月の文学フリマには参加しませんでしたが
11月の文学フリマ(東京会場)に参加すべく
新しくなにか作っているところです。
それは手書き原稿を基に、活字化を経ず作る詩集で
まだ表紙をつけてないけど、連休中に印刷していました。
本当に自家製で(外で印刷や製本、表紙加工などをしていない)
活字はできるだけ使わず
手書きの文字ということを、目指しています。
活字は活字で
それはよいものですが、手書きで悪いという理由もないのです。
たぶん、3冊作るんじゃないかな。
今、まだ1冊めです。
1冊めの題は『エコトーン』といいます。
あまりなじみのない分野で、なじみのない用語に出くわすとき
いい言葉だと感じることがあります。
下の in vitro という用語もそういった言葉のひとつです。
秋までに少しずつ、手で作ることになるでしょう。
人工的なところがないと、非常に稚拙に見えるはずですが
中身の詩は同じなのです。
本当は、紙のうえに書かれたものだけでも
詩です。
製本すらする必要がないのかもしれず
どんどん「形」を分解して、くだっていくと
それはいったいなんだろう。
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in vitro
これはわたしの細胞 ちいさく破裂をつづけている
雨を察知してふるえている
命の最小単位
聞いてはいるが 探すことのない
登録済みの住所のように ある
ちょうどよい現在 急ぐことなく 遅れもしない
ほどよい速度が指揮する もうひとつの恒星
結び目をつくってはほどき ほどいては結んだ挙げ句
すべて壁のむこうに置いてきた
わたしの道筋が
溶液に浸されては 去年のカレンダーのように褪せる
意図の二文字は ガラスの底に据えられて
新緑のように光り崩れる
星々の透ける夜の蓋が そっと誰かの肩を押さえて
一日の枠が今、終わる
鉛筆と少しの揺らぎと 離れたひとつの視線がある
ゆったりと反応する藍いろの根にわたしはなる
(c) Noriko Hirotomo
