「知らないこと」があることを
とても嫌がっている8歳の少年がいた。
発達に課題を抱えてはいるが、頭のいい子であった。
石の名前、電車の型番号が意味すること、外国の通貨・・・
特定のことに興味を持つと、
そのことについてとことん調べ、細かいことまでよく知っていた。
だけど、クラスメイトと遊んだり、おしゃべりしたりするのはとても苦手だ。
「変わっている」と思われ、いじめられてしまうこともある。
ある時、少年が話してくれた。
恥ずかしいから、話したくないと思ってましたが・・・・。
この間、大人の人に質問されて「 知らないこと」があったんです。
とてもいやでした。
むずかしいものではないんです。
果物の名前とかで・・・・、
自分は、そういうものを、あまり知らないもんで答えられませんでした・・・。
少年は、確かにいろんなことをよく知っている。
でも、同年代の子どもたちがよく知っているようなものを知らないことがある。
恥ずかしそうに説明する少年の話を聴きながら、
「知らないこと」があるって、ダメなことだと思ってたんだ・・・とつぶやいた。
すると、「はい」と少年は即座に答えた。
正直にそう答えてくれた少年の心の透明さに、ドキドキしながら、
少年の心に耳を傾け続けた。すると、少年がたずねてきた。
先生は、「知らないこと」はないから、いやな気持にはならないですよね?
少し驚いたので、私も「知らないこと」ってありますよ、とゆっくりと答えた。
「えっ」と、少しおおげさに後ろにのけぞる少年。
説明することにした。
先生はちょっと君とは違う考えをもっているの、
「知らないこと」があるってことは、新しいことを知れるってことでしょ、
だから、わくわくうれしい気持ちになることが多いんだ。
少年は首をななめにかしげて、じっと私をみてたな。
そこで、もう少し説明してみた。
君はその時、「知らないこと」だって気づけたんだよね、
そしたら、それを「知ること」ができるじゃない!
そしたら、人は「進化」できるんだよ。
ゲームの大好きな少年だったので、あえて「進化」という言葉を使ってみた。
そしたら、少年は目をきらきらさせて、それはすてきだ・・・と息を吐くようにつぶやいた。
私たちにとって
知らないことがある体験は、確かに不安にさせられる。
でも、知りたいと思い、知ろうと行動することで
自分を成長させていくこともできる、大切な体験になる。
この少年は、とってもピュアな心をもっている。
天使のような少年だと思う。
私の知らないことをたくさん教えてくれる。
彼は、私に「進化」できるチャンスをたくさんくれる。
でも、この少年はいじめられていた。
こんな子どもたちがいじめられる社会って、すごくおかしいと思う。
彼らが幸せに生きられるように、私たちがもっと「進化」しないといけないなあと思ってしまう。