「どれほど善意であっても、弱者や被迫害者に同情的であっても、『この世の罪は、<マニュピレイター>が操作している』という前提を採用するすべての社会理論は『父権制イデオロギー』である。だから、『父権制イデオロギーが諸悪の根源である』という命題を語る人は、そう語ることで父権制イデオロギーの宣布者になってしまう。この蜘蛛の糸から逃れることはむずかしい。

なぜ、私たちは『父』を要請するのか。

それは、私たちが『世界には秩序の制定者などいない』という『真実』に容易には耐えることができないからである。

世界に一気に正義を実現し、普遍的な秩序をもたらそうとする運動は必ず『父』を要請する。正義を一気に全社会的に実現しようとする運動は必ず粛正か強制収容所かその両方を採用するようになる。

私たちは『父権制イデオロギー』に対抗する軸として、『ローカルな共生組織』以上のものを望むべきではない。」(内田樹著『邪悪なものの鎮め方』)

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