『僕(内田)は境界を守る人という言い方をするんですが、われわれの世界が人間的世界として成立するためには、人間的世界とその外部になる非人間的な領域を切り分けている境界線を守る人が必要である。そういう人がいなければならない。非人間的な領域からは、人間を汚し、損ない、傷つけるものが侵入してきます。それは邪悪なもの、暴力的なものという場合もありますし、あるいは、村上春樹が『IQ84』で描く、”リトル・ピープル”のようなせこい悪意や、見苦しい弱さというかたちを取るときもある。

さまざまな形象をとって非人間的なものがわれわれの世界に入り込んでくる。それを境界線の向こうに押し戻す。誰かがその仕事を引き受けなければならない。弱さとか、憎しみとか、嫉妬とかは、人間的なものだ、というふうに皆さんは思っているかもしれません。でも、僕はそれは違うと思う。

これは、人間世界に侵入してきた非人間的なものと人間的なものが出会ってできたアマルガムのようなものだと僕は思っています。そういった中間的な合成物を通じて、非人間的なものは人間たちの世界に侵入してくる。邪悪さや嫉妬や暴力や怠惰、あるいは自己憐憫、自己規律の弱さ、そういったものは、そこを通じて非人間的なものが侵入してくる回路なんです』(pp116-117, 『日本霊性論』内田樹、釈徹宗著)

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