summer vampire。 | nekodaraぶろぐ。

summer vampire。

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耳元で、蚊の羽音を聞いた。
考えるより先に、僕の腕は害虫が飛んでいるであろう空間を素早く払った。
とたんに湧き上がる僕の中のどす黒い感情。
沸点の低い何かの液体が、僕の中で一瞬で気化し、その臭いは僕の頭の奥からゆっくりと鼻を抜けた。自由になりそびれた液体は、どろどろと僕の中核に沈んでいった。
『殺す!!』
眼鏡をかけ直し、周囲を注意深く見る。白い壁紙に、黒い小さなシミがいくつか目に入る。これは全て僕の血。正確に言えば、僕の血で自らの子孫繁栄を目論む敵の、哀れな末路の跡である。
僕の眼ははそれら1つ1つを目で追う。壁に、生きた敵はいないようだ。そうなると…!
天井を仰ぎ見た僕は、先程の羽音の主を発見した。僕の手の届かない場所で、僕を見下していた。おのれ…!僕はヤツから眼を逸らさぬまま、手探りで足元にあったノートを掴んだ。
それからは、一瞬の出来事だった。僕はベッドの反動を利用して飛び上がり、天井の吸血鬼を聖典と化したノートで叩き潰した。
最後こそ呆気なかったが、恐ろしい敵だった。しかし、今回も何とか被害が少ないうちに倒すことが出来た。
これで平和が戻る。僕の安眠が守られる。



…さて、天井に張り付いた蚊の死骸、どうしよう…。
手、届かない。