永田が自分の過去を語り出した。



永田智雄には双子の兄と二つ下の妹がいた。兄の名前は「智治(ともはる)」。妹の名前は「比奈(ひな)」。

智雄と智治は双子と言っても二卵性の双子だったので容姿も違えば性格も違った。成績優秀、スポーツ万能の智治に対して、智雄は容姿の良さしか智治に勝てる所がなかった。



それでも智雄は智治の事が好きだった。



クラスでいつも1番を取る智治の事を尊敬していた。妹の比奈も智治の事を慕っていた。

智雄達兄弟が高校1年の時、智治はギターにハマる。智雄もそれに習いギターを始めるが、智治ほど上手くはなれなかった。



それでも智雄は智治の事が好きだった。

ホントウニ…?



智雄は歌を歌うのが人より少しだけ上手かった。なので、智治がバンドを組んだ時、ボーカルとして智雄はバンド仲間に加わった。

智雄達の父も昔バンドをやっていたので、2人の事を応援していた。特に自分と同じギターをやっている雅治に対して目をかけていた。

というか、父は智治のことしか見ていなかった。智雄が話しかけると一瞬笑顔で答えはするが、次の瞬間すでに智治の方を向いていた。



それでも智雄は智治の事が好きだった。

ホントウニオレハスキダッタノカ…?



ある日、ライブをする事が決まった。芸能事務所の人が智治の事を知り、東京ドームで開かれる大物アーティストのライブの前座で一曲演奏させて貰える事が決まったのだ。その時は楽器の演奏だけでボーカルは必要なく、智雄は連れて行ってもらえそうになかった。だが智雄が少しわがままを言う、智治はニコッと微笑んで了承したが、他のメンバーは渋々了承した。



それでも智雄は智治の事が好きだった。

ホントウニオレハスキダッタノカ…?トモハルのコトガ?



それは突然起きた。智治が死んだ。東京へ向かうワゴン車に居眠り運転のトラックが突っ込んだ。ワゴン車の前部分はバラバラ、乗車していたバンドメンバーと運転手は智雄以外全員死亡が確認された。智雄は1人後部座席(3列目)に座らされていた為、足を骨折する程度で済んだ。



智治が死んだ。

コレデヤットミンナオレノコトヲミテクレル?



智雄が治療を終え家に帰ってくると、父は狂うように嘆いていた。ギタリストとして手塩にかけて育てて来た智治を失ってしまったから…

智雄は父を慰めようと松葉杖をつきながら近くに寄る。


智雄が近くに寄ってきた事に気付いた父は、思い切り智雄を殴りつけた。


ボコッ!!!


智雄「えっ?…」


ドサッと智雄は倒れ込む。

そして父は…親として言ってはならないことを言った。


チチ「トモオ…ドウシテオマエジャナカッタンダ?」

智雄「あ…う…?」

チチ「ドウシテサイノウノナイオマエジャナク、サイノウノアルトモハルガシンデシマッタンダ?……ウゥッ…オマエガ……オマエガカワリニシネバヨカッタンダ!!!」


父は本当に狂っていた…そう言うと父は、智治が愛用していたギターを手に持ち振り上げ、智雄に向かって振り下ろそうとした。

智雄は父の言葉にショックを受け動くことが出来なかった。


父の目には今もまだ智雄の事は映っていなかった。



その時、


比奈「やめてよ!お父さん‼︎」😢


異変に気付き駆けつけてくれた比奈の悲痛な叫びで父の動きが止まる。同じく事に気付き駆けつけてくれた母が、智雄を守る様に父と智雄の間に入り父からギターを取り上げた。そしてギターと共に智雄を抱きしめる。


母「グスッ…このギターは智治の形見なんですよ!そんなギターで!しかも智雄を…!このギターは絶対に壊させない!それに智雄もコロさせない!私はもう…これ以上大事な息子を失いたくありません!!」😢


比奈「お父さん‼︎もうやめてよ!智治兄が死んだのは智雄兄のせいじゃないでしょ⁈智治兄が死んだのは悲しいけど、智雄兄も死んじゃったら…私嫌だよ!それに、叫びたいのはお父さんだけじゃないんだよ!私だって、お母さんだって、智雄兄だって………」😢



父は膝から崩れ落ちた。



智治が死んだ。

オレハナミダナンテデナカッタ?



その日、智雄は家を出る事を決めた。




智治の葬式が終わって少し落ち着いた頃、智雄は家を出て一人暮らしをする。その時に母と妹の比奈から智治のギターを託された。


比奈「智雄兄、このギター持って行って。またいつお父さんが暴走するか分からないから!」


智雄「…母さんはいいの?」


母「………ええ。たとえ二卵性とはいえ、智治はあなたの分身みたいな子よ。…いつも一緒にいてあげて。」


智雄を見送る場に父の姿はなかった。


〜〜〜〜〜


永田は語り終えると震えた声は止まっていた。


下嶋「永田くん…」


永田「しげちゃん…俺、智治の事好きだったのかな?」


下嶋はうなづく。


永田「でも俺…」


下嶋「永田くん。もし君がお兄さんの事を嫌いだったら、なんでこのギターを捨てなかったんだい?捨てるなり実家に返すなりすればよかったのに、君はずっとこのギターを持ってたんだ。」


永田「それは…」


下嶋「そして、僕がバンドでギターをやりたいと言った時、一番にこのギターを持って来てくれた。」


永田「………」


下嶋「正直300万のギターには驚いたけど、僕は………」



その時、永田には下嶋の事が一瞬『智治』に見えた。


智治「俺は、お前とバンドが出来て嬉しいよ。智雄。」


智雄「智…治…?…智治………俺…」😢


智治「あの時はお前1人だけ後部座席に座らせてごめんな。でも、あれでよかった…もし智雄も一緒に死んでたら、父さんも母さんも比奈ももっと悲しんでた。」


智雄「俺…お前が死んだのに泣けなかった…」😢


智治「…俺には分かってたさ。みんなの前では泣けなくとも、心の中で泣いてくれていた智雄の事を。」


智雄「グスッ…智治…」😭


智治「父さんの事、許してやってくれ。あれは本心じゃない。」


智雄「…うん……」😭


智治「智雄…ありがとう。お前と一緒に生まれて来れて、俺は幸せだったよ。」


そう言うと智治の姿は消えていった。


それは幻だったのか、ギターに宿った智治の魂だったのか………。だが、この事は智雄の心の氷を溶かすのに十分な出来事だった。



下嶋「永田くん!どうしたの⁈」


下嶋は涙を流している永田を心配する。


永田「……しげちゃん………何でもないよ。」


心配された永田は涙を拭いそう言った。そして、


永田「しげちゃん…俺、改めて頼みたい!俺、しげちゃんと…智治のギターと一緒にバンドがやりたいんだ!だから、俺をしげちゃんのバンドに入れてください!」


下嶋「もちろんだよ!永田くん!」


永田「よろしく!しげちゃん!」


こうして永田が新たな気持ちで、改めてバンドメンバーに加わった。

今日は智治の月命日。練習の後、永田はバンドメンバーと共に智治の墓参りに行った。



つづく