『奇跡の脳』 ジル・ボルト・テイラー

脳卒中を患った脳科学者の実体験から、右脳と左脳のまったく対照的な役割について、かなり詳しく学ばせてもらった。

正直なところ、右脳と左脳がここまで明確に、性格のちがうものとは知らなかった。これまでのイメージでは、両者は「脳」という一つのまとまりを構成する「かたわれ」に過ぎず、たとえどちらかが欠けたとしても、反対側でおぎなえるのではくらいに想像していた。

だから私にとって、この事実はとてもおもしろい。

人間はなぜ、どこまでいっても「二面性」の世界に産み落とされなければならなかったのか。内側も外側も。
一体この世界で何を学べと言われているのだろうか。

この本を読んで、素人目にもわかったことの一つは、右脳・左脳の両者がうまくバランスをとれるよう、自ら手綱を握ることを最優先に習得しなければならないということ。

つまり「私」とは、脳内で第三の視点に立つ、より高次な存在。

脳が科学的に私の世界を支配しているわけではない。

私の高次の「魂」こそ、この人生をコントロールすることを許された主人公なのだ。

誰しも自動操縦に任せると、思考パターンのクセに翻弄される。
著者のことばを借りれば、「脳の中の物語作家」がつくるストーリーだ。


自らの傾向にあてはめて考えると、私は右脳マインドも左脳マインドもとても感度が高いように感じる。

問題は、両者を繋ぐ架け橋が脆く、浮き沈みの激しい人格になっている。

その内面が外の世界にも投影されて、実際にさまざまなトラブルを自ら引き起こしてきたような気がする。

世界をより豊かなものにすべく、偏りのない穏やかな状態を目指し、心の庭をたがやすことに専念することが大切だ。

それぞれを客観的に冷静に、観察しよう。
 

右脳マインドで感じること。その直感的な感覚は間違っておらず、もっと信じてあげて良い。
大切なのは、その感覚を現実世界に繋げる左脳の働きとの関係性。
左脳優位のとき、機械的にこなすことが快感で躁状態になることが多い。逆に右脳優位は怠惰、「うわのそら」だ。

これまでは、この差に気付いてさえおらず、ただ両者がそれぞれ独立した状態で暴走するのに任せて、うまく接続させられていなかった。

高次の「魂」が、いかに脳の両輪をうまくかみ合わせられるよう、優秀な司令塔たれるか。地道なトレーニングを忍耐強くつづけるほかない。

まずは、この脳と魂の構造に気付かせてもらえたこと。
このことが今回の何よりの収穫であり、感謝している。