短編 キーチ化現象 その1 | ブッダの耳たぶ
うるさいと言われるほどよく喋り、
猿のようにかけまわっていた。
その頃は、もう一人の自分が存在するなどとは思ってもいなかった。

築き上げてきたものが一気にくずれてゆく。
築き上げたつもりもないが、
あたりまえのことがあたりまえでないことすら気づいていなかった。
そんなことを理解するにはまだ幼すぎた。

新しい街は真っ白に見えた。
広い緑の公園、少し角度が違うだけの同じ建物が16も並ぶ団地。
坂道のまったくないこの街はすごく単純にできているはずなのに、
どこまでいっても出口にはたどりつけない迷路だった。

どこにいるのかさえわからない
みつけてくれる人さえいなかった。

さて、どーするか…。

体だけここに置いていこうか
心だけここに置いていこうか
ナメクジのように溶けてしまおうか