こんにちは

 皆さん、家にお砂糖入れありますよね。紅茶、コーヒーのお供はガラス製ですか?陶器製ですか? 今回、長年の思いから、ユニークなお砂糖入れを作ってみました。

 

多くのお砂糖入れはガラス製か陶器製ですね。シンプルで機能性に優れています。

 ガラスの器も好きですよ

陶器の魅力も負けてません 

 

 思い返しますと40年くらい前(年がバレますね)のことです。地元だった田園都市線あざみ野駅の近くに、「レーマン」という洋食店(喫茶店?)がありました。そこでは、店内に大型鉄道模型のレールが敷かれ、お客のテーブルまで列車が料理を運んできてくれるというものです。

 

 同じコンセプトのお店は今でも全国に点在し、東横線祐天寺駅近くのカレーとコーヒーの店「ナイアガラ」は有名ですよね。

 一瞬びっくりな店構え

1番線にカレーが到着♪ 

 

 「レーマン」はだいぶ以前に閉店してしまいましたが、ネットで検索しますと、思い出の断片レベルで書き込みを見つけることができます。残念なことにお店に行く機会はなかったのですが、たまたま近所を訪れていた際、レーマンから出前してもらったコーヒーにお砂糖入れも一緒についてきました。そのお砂糖入れがトロッコの模型を使ったものだったのです。トロッコのバケットがお砂糖入れになっていて、スプーンが挿してあり、透明な蓋が被せてありました。お店ではテーブルまでこれが走ってくるのでしょうね。お砂糖入れに使えるサイズですから、もはや子供のオモチャサイズではありません。目の前に現れたビッグスケールは衝撃的で、しかも日常用品になっている!

いつか自分もこれを作ろうと思っていました。

 このように印象把握が鮮明な割には、お砂糖入れの強烈なインパクトに押されてか、ミルクについて記憶にありません。少なくとも模型関係ではなかったのでしょう。もしレーマンのお店をご記憶の方おられましたら、私の思い違いなど含めてお知らせくださると嬉しいです。お店のあった場所は、現在「馳走きむら」というミシュラン★★の日本料理になっているそうです。

 

 お店の名前もここからなのでしょう。この大型鉄道模型こそLehmann-Groß-Bahnであり、庭などで楽しめるレール幅45mmの全天候型模型です。創業者名=ブランド名で、頭文字をとってLGBと呼ばれることも多いです。屋外使用を前提に設計された堅牢な造りで、やや玩具的な面持ちの模型は、本家ドイツのみならずアメリカで大きな人気を博し、庭園鉄道模型と言えばこれを指すほどになりました。歴史は古く、1881年ドイツの玩具メーカーとして創業しました。何度も経営の危機を乗り越え、現在はドイツの鉄道模型会社メルクリンの傘下にあります。

1981年版のカタログ 100周年です

          ゾウが踏んでますよ!

屋外レイアウトの様子。大きいなあ

 

 お店のお砂糖入れのベース模型は、1971年に発売開始した品番4043のTipper Wagon(独:Kipplorenwagen)で、写真のように代表的なトロッコ(ナベトロと呼ばれる)のスタイルです。

 1981年版にも載っています

 原行品は積荷付き

 

 模型は、臙脂色のバケット部分を横に倒して荷卸しができるギミックが付いており、これは実物のトロッコと同様の機能です。バケットを倒しても本体は安定しており、かつ水平状態ならバケットが外れない巧妙な仕掛けになっています。1991年生産品までは空荷でしたが、後に鉱石を模した積荷が追加され、品番42430として今なおカタログに載っているロングセラー製品です。バケット部がグレーの品番4143・41430や、東ドイツ仕様の品番49431、クラブ特製モデル品番40430、その他にセット組品(70503、72503、49501)など多数のバージョンが存在します。小さく見えますが、長さ約17cm、幅約9.5cm、高さ約9cmという堂々としたものです。

 

 前置きが長くなりました。「いつかは」の希望から、品番42430のモデルを1台購入してあり、これがようやく日の目を見ることになりました。

 やることは単純。製品部分はそのままに、スプーンを挿して、透明アクリルの蓋をすること。「これなら簡単に作れそう」とタカをくくっていましたが、甘かったですよ!やってみると、失敗とリカバリの連続でした。

 

 まず、アクリルの加工で大失敗。バケット部に被せるためには、3面に折り曲げた形に成形する必要があります。このような場合、素材となる板材を加熱して曲げるか、面ごとに切り出したパーツを接着して作ります。前者の正確な加熱曲げは明らかにプロの仕事ですし、道具もないことから後者しかありません。カッター(Pカッター)で任意の場所に切れ込みを入れ、ここを中心に曲げ応力を加えるとこの切れ込み部で割れます。しかしプラに比べてアクリルは大変固く、木片など治具を使って慎重に行ったのですが、これでも思うように割れてくれませんでした。あらぬところでパリンと…。

 イカン… ;-(

 

 手をケガする前に素直にギブアップ。カットの外注も考えましたが、それでは「自分で作る」満足は得られません。シースルーの蓋を諦め、手慣れたプラ素材に変更しました。

 プラならお手の物。1mm厚のプラシートに展開図を書き込み切り出します。この時点でスプーン挿す場所の「逃げ」や、ツマミを付ける穴も開けておきます。3面に曲げる部分にPカッターでスジを彫り、ここを谷に曲げながら、タミヤの流し込み接着剤を塗りこみます。接着剤で素材が軟化しますので、ジワジワ曲げてバケット部に沿う角度に成形します。元に戻ろうとする残留応力がなくなるまでジワジワ曲げを続け、形が決まったら垂木を接着して固定します。これでぴったり蓋になりました。

 プラならこの通り!

 

 さて素材を変更したため、劣化を防ぐ塗装をします。ユニオンジャック柄を考えましたが、実物のフラッグの縦横比(1:2)に対し、モデルの蓋はほぼ正方形(94x100mm)のため、以前作ったPlatinum Jubilee Vanのようにはいきません。

 結局フラッグの1/4をモチーフに、風になびいたようにしました。このアレンジがフラッグの使用規定を満たしているか不明ですが、これに近い使い方を一部のサイトで見ますので、まあ良しとしています。ごく個人的なものですし。

 

 最初に下地になる白を塗装します。塗装は、最後の保護用クリアーを除き、全部刷毛塗りしました。曲線のマスキングはまずイメージの把握からです。ラフスケッチからマスキングテープのカットまで、正確を要求されるモデルではないので気楽にフィーリング作業です。

 さて、ここまでは順調です。しかし思い通りに貼るのは意外と大変で、何度も位置合わせしてやり直し、ようやく納得(妥協!)に貼りました。しかしこのリテイクが後に大変な苦労を招いたのです!

 ラフスケッチを原寸大に

トレースもフィーリングで 

 フリーハンドでカット

なんとか貼りました 

 まず赤から

次に青を 

 

 マスキングが終わり、赤部、青部を塗っていきます。なお色のチョイスはPlatinum Jubilee Vanの時と同じで、Mr.カラーの1(白)、3(赤)、328(青)です。白は3度塗り、赤と青は2度塗りです。数日間十分乾燥させ、いよいよマスキングを剥がします。Platinum Jubilee Van同様、鮮やかな柄が現れる!ことを期待してペリペリと…。

 

 しかしその結果はというと、滑らかな塗り分けとはほど遠くギザギザではありませんか!そうです。何度も貼り直した結果ノリが弱り、密着が不十分で塗料が染みてしまったのです。愕然…。

 剥がしたらギザギザ!

全部ギザギザ! うわー! 

 

 リカバリの方法に悩んだ結果、塗り分けラインの体裁を整える補修をすることにしました。染み出した赤と青の塗膜のみを剥離するのです。まず正規の塗り分け線に沿ってカッターで軽くスジを入れます。塗り分け線に対し直角にカッターを当てて左右に動かし、はみ出した部分の表面を軽くひっかいて微量ずつ剥離していきます。

 一か所一か所、一本一本、根を詰めること数時間で、なんとかギザギザを処理できました。

 深く隔離した箇所や、プラの地が露出した箇所、塗り分けが乱れた箇所は、それぞれの色でタッチアップします。剥離した箇所はツヤがなくなっていますが、あとで表面をコーティングしますので、そのままです。

 これでやっと塗り分けが整いました。マスキングは難しいですね…。最後に表面保護に光沢クリアーを吹き付けて仕上げました。ふぅ…なんという遠回り。

 地道な努力(再現)

 お、直りそう?(本物) 

なんとか繕いました 

 

 ツマミには「ウッドビーズ」を使用。これは手芸店や100円ショップで入手できます。紐を通す大穴をプラ素材で埋め、代わりに小穴を開けて雌ネジをたてておきます。プラが見える部分を近似色でタッチアップすると、市販の部品に遜色ない仕上がりになりました。これをネジ止めして蓋まわりは完成です。

 

 

 スプーンはなんでも構わなかったのですが、以前100円ショップのセリアで買った「シャベル型スプーン」があり、お遊びでこれに設えました。ずっと普通のスプーンとして使っていたのが、やっと天職に巡り逢えました。

 お似合いです!

 

 バケットの横には、ラベルプリンターで作った「SUGAR」のステッカーを貼りました。車の窓にフィルムを貼るのと同じ要領で、石鹸水を使って気泡が入らないよう慎重に貼ります。

 また車輪のリムに白いお化粧をしました。ちょっとチープ感が和らぎ、ドイツ製品が一気にイギリス風に化けました。

マスキングテープは位置の目印。爪楊枝はバニッシャー

 気泡なし!

 洗って食器の仲間入り

 

 各パートを合わせて無事に、いえ、紆余曲折の末、オマージュしたモデルが完成し、40年越しの計画がゴールに辿り着きました。さすがに、キッチン~食卓に線路はありませんが、このコには末永く紅茶とコーヒーのお供をしてもらい、ゲストにサプライズを与えるホストを務めてもらうつもりです。もちろん、勝手に走り出してどこかにお砂糖をばらまかないよう見張りながら。

それではまた!