今日で東日本大震災から13年となります。

 

たぶん、これほど苦しかったことはありません。

そして、これほど人を想ったことも、なかったと思います。

 

「大丈夫?」と無責任に聞いてくる人に、

激しく虚しさを感じたり、

 

「大丈夫じゃない」と答えたら、

あなたはどうするのか?同情する気なのか?泣く気なのか?

受け止める力もないくせに聞いてこないでくれと、

激しい怒りを感じたり、

 

「帰るところがない」と言われて、

何もできない自分が、心から心から恥ずかしかった。

呪いたいとさえ思った。

 

 

いったいどうすれば、

私はあなたに寄り添えるのか。

 

 

虚しさと、寂しさと、悲しさと、

 

無力感。

 

そして絶望。

 

 

私にはまだまだあるくせに、

何に絶望しているのかも分からなかった。

 

 

全てを失った友人に、

差し出せるものなんて、本当にあるのか?

 

 

いつもそんな戸惑いの中にいました。

 

 

 

とある友人は、廃人になりました。

 

 

生きてはいるんです。

 

 

でも、目も当てられないほど、

別人になってしまった。

 

 

人は本当にそうなるんだと、

身を持って知りました。

 

 

 

彼は地元で代々続く会社の社長さんでした。

 

でも、何もかもを失った。

 

 

 

いえ、家族はいました。

 

 

 

 

でも、家族しか残らなかった。

 

 

 

福島県の友人の多くは、

その土地には戻れませんでした。

 

そしてその後、家族がバラバラに暮らす選択を

せざるを得ない人も多かったです。

 

彼もまた同様に、

当てもない土地で、一人で暮らす選択を取ることになりました。

 

 

諸般の事情を考えると、

この決断しか取れなかっただろうと思います。

 

 

でも、さぞや苦しかったでしょう。

 

 

 

確かに、彼の家族が生きていてくれたから、

言ってしまえば、まだマシだったかもしれません。

 

 

 

でも、彼の心の傷は、私の想像以上に大きいものだったんだと、

後で知ることになりました。

 

 

家族がいたら、生きていたら、それでいいのか?

ということです。

 

 

あなたにとって大切なものの中に、

 

家はありますか?

仕事はありますか?

その土地というものは入っていますか?

 

その土地で、友人と会う、ワイワイ過ごす。

その土地で、美味しいものを食べる。

季節を感じる。。

 

その当たり前の喜びを、失うということ。

 

付加価値だと思っていたものの、

本当の価値です。

 

 

絶対的不可抗力で大切なものを失うというのは、

 

人をこうしてしまうんだと、

私は分かっていなかった。

 

 

 

いつも堂々としていて、

クールでお茶目で、ハンサムで、

みんなに愛されていた彼は、

 

文字通り、廃人になり、引きこもるようになりました。

 

 

 

それでも、震災直後は、

普通だったんです。

 

 

でも、だんだんと

 

無口になり、

太り始め、

家に引きこもるようになり、

 

人には会わなくなりました。

 

仕事なんて、もうできない。

できるような状態じゃなかった。

 

 

 

 

一度だけ連れ出したのですが、

あまりにも変わりすぎて、

 

私は驚かないように、必死でした。

 

 

その風貌に驚いたのはもちろんなんですが、

 

 

虚ろな目が、

何を見ているのか、分からなった。

 

焦点はどこに合っているのか?

 

 

そこに彼はいても、彼の心がそこにないということが、

怖かった。

 

 

 

心が閉じると、

人はそうなってしまう。

 

 

 

彼が、そこから復帰するまで、

3年ほどかかったでしょうか。

 

 

「就職した。」と聞いたとき、

どれほど安堵したか分かりません。

 

 

 

でもね、彼はずっと社長だったんですよ。

 

どれほど

自分の能力と、自分自身と向き合ったのだろうかと思います。

 

 

 

全てを失ったら、

全てを再スタートできる!

 

そんな風に前向きに考えて、

チャレンジをし始めた友人もいました。

 

 

 

でも、すべての人がそうではない。

 

 

 

私は、「社会に戻るまで3年」は、

早い方なんじゃないかと思っています。

 

 

本当に落ち込むには、

力が要ります。

 

 

絶望と向き合うのは、

決して、決して、楽なことじゃない。

 

 

 

一生そのフタを開けない覚悟をした方も

おそらくたくさんいらっしゃると思います。

 

 

 

でも、それほどのことだった。

 

 

 

13年。

 

 

あっという間のようで、

長かった気もします。

 

その後の風景は、落ち着きを見せているように感じますが、

 

 

 

人を想う時、

 

どうか、その心が、本当に、

 

 

穏やかで平和で、やすらぎを感じるものであって欲しいと、

今でも、心から願っています。