私たちの世代にとって、彼女の描く世界は、近いようで遠くもあり、
それでも紛れもなく、どこかにある世界だった。

まだ中学の頃、つづけて読んだ「なぎさボーイ」「多恵子ガール」「蕨が丘物語」
そうか、高校生になったらこんな恋するのかぁとか妄想した。
#今思うととんでもないことだけど。笑

今となっては、「あまあま」すぎて読めないけど、
当時の私には「なぎさボーイ」が紡ぎ出す世界はキラキラして
とてもまぶしいものだった。

この間、手持ちの本を整理しているとき、「さようならアルルカン」を読んだ。

未だ色あせない、ひっそりとした空気。
私は彼女のコメディも好きだったけど、「さようならアルルカン」や「白い少女たち」の作品に流れる、
小雨降る日の湿った空気のような、
夏の日に家の中に探し当てた、ひんやりとした暗がりのような、
そんなひっそりとした空気が好きだった。

久しぶりに手持ちの彼女の作品を読み返そうかと思っていた矢先だった。

氷室冴子さんのご冥福を祈ります。