映画に詳しい平成くん達は、『シン・ゴジラ』がサラウンド無しの、3.1chというオーディオで劇場公開され、Blu-rayやDVDでは、そのサウンドとステレオ音声を収録。WOWOWで放送された時は5.1chとの表示でしたが、そのためにリアチャンネルを加えたのかは不明。

 

日本映画専門チャンネルで(確か)放送した際は、オリジナルの3.1chでの放送とアピールしていた記憶。

 

衝動的な「思いついたが吉日」性格の私は、2019年にパースペクタ・ステレオに関わっていた録音技師さん2名を招いたフィルムセンターにおけるセミナーがあったことを今週まで知らず、国立映画アーカイブへ電話してお話しさせていただきました。

 

その前に、パースペクタ・ステレオを平成くん達になんと説明すればいいのか、考えあぐねていました。

 

ちなみに日本の映画会社で、パースペクタ・ステレオを採用し、何本も公開したのは東宝一社。

日本では、東宝のトレードマークにアルファベットで TOHO SCOPE の表示があるスコープ・サイズの映画には、モノラル音声、パースペクタ・ステレオのアンプ(デコーダー)とサウンドスクリーンの裏にデフォルトのセンター・スピーカーに加えて左右にもスピーカーを設置してある劇場では、そのモノラル音声に含まれる信号で、音響技師が画面に合わせて、かなり細かくどのスピーカーからこの音を出したり、台詞から効果音までパン(左右に移動させること)させていました。

 

私は、パースペクタ・ステレオを「疑似ステレオ」の一種とは呼びたくありません。『用心棒』の冒頭の音楽など、3台のスピーカーから同時に、異なる音が出ているのですから、モノラル音声を2チャンネル・ステレオから異なる音声を出すようなものとは違います。

 

グレン・グールドのモノラル録音をレコード会社が疑似ステレオにしたように。あの盤がグールドの承認を得ていたのかは分かりませんが、ステレオ録音のLPのような空気感は出ません。

 

レーザーディスク再生機とソフトをパイオニアが発売した当初、外国映画は20世紀フォックス作品が目立ちましたが、オリジナルがモノラル音声の作品を「電子的に」疑似ステレオしたとジャケットに表記がありました。アメリカからフォックス以外の会社の映画ソフトが輸入されていたので石丸電気に通ったものです。

 

古いジャズやポピュラーのレコードだと、楽器ごとに左からしか聴こえないようにしたり、右からしか聴こえなくしたりしてましたが、あれが自然なステレオ録音だと、いや、単なる2トラック同時再生音声としか思えません。

 

脱線しましたが、上記のような疑似ステレオとパースペクタ・ステレオを同じ「疑似ステレオ」と並べるべきではないと思います。

 

確かに、黒澤明監督作品のDVDやBlu-rayでしかパースペクタ・ステレオを再現したものには、一部、位相が逆になっているのでは、と思わせる部分もありますが。

 

黒澤明作品でも、『モスラ』でも、TOHO SCOPE作品は、パースペクタ・ステレオ対応でした。

 

低い解像度で申し訳ありませんが、 Perspecta Stereophonic Soundの表示があります。

 

黒澤明監督作品が東宝から最初にDVDリリースされた際、パースペクタ・ステレオ音声については、古い図面を元に復元したという説明があったのですが、どうして、東宝特撮映画のTOHO SCOPE作品のDVDに3.1ch音声を収録してくれないのか、イケズやな、と思います。

 

東宝の連結子会社「東京現像所」には数多のパースペクタ・ステレオ音声が眠っていることでしょう。

 

古い名作映画などが、4Kレストアされ、そのままパッケージで販売されたり、フルハイビジョン画質の2Kで放送されたり、文化遺産でもある映画を見事に蘇させるのであれば、映画には欠かせない、映画鑑賞体験の一部でもある、サウンドトラックも大切にしていただきたいものです。

 

ということで、平成くん達には、パースペクタ・ステレオ音声が収録されているDVDを渡すなり、レンタルを推奨したいと思います。

 

ちなみに、ドルビー・アトモスは好きになれません。オーケストラのバイオリンが右の壁から聴こえたかと思えば左に移動したり意味不明。特定の音があっちから聴こえたり、こっちから聞こえるように移動するということは、パースペクタ・ステレオと五十歩百歩。3スピーカー間での平面移動か、サラウンド・スピーカーを取り入れた疑似立体ステレオの違い。激辛ラーメン同様、極端=ヒステリックなことして割増料金を取るのは好きになれない。

 

4K上映で5.1ch上映が一番いい。