インターホンが鳴った。
急に時間が巻き戻るようだった。
「遠くより朋友来たる、また楽しからずや」
その言葉を、久しぶりに実感した一日だった。
かなり昔、台湾で1年を過ごしたことがある。
そのとき、大変世話になった家族がいる。
ほとんど毎日のように、ご飯を食べさせてもらった。
観光にも、いろいろ連れて行ってくれた。
一人でいるときにお腹が空かないようにと、パンやおやつを持たせてくれたこともあった。
家にも何度も泊めてもらった。
当時はまだスマートフォンなどなくて、Nokiaの携帯電話を長いこと貸してくれた。
思い出せば、きりがない。
本当に、世話になった。
それなのに——
こちらからは、これといった恩返しができていない。
そのことが、ずっとどこかに引っかかっていた。
そんな彼らが今回、レンタカーを借りて我が家まで来てくれた。
台湾高山茶に、名物のパイナップルケーキ。
両手に抱えきれないほどのお土産と一緒に。
——あの頃と変わらない気遣いだった

出会ってから、もう30年近くになるだろうか。
気の置けない、昔からの友人だ。
本来であれば、あちこち観光に連れて行ったり、外で食事をしたりしたかった。
でも今の自分の体力では、それは難しい。
結局、家で食事を囲みながら、ゆっくり過ごすことになった。
それでも——
時間は、あっという間に過ぎていった。
尽きることのない思い出話。
共通の知り合いの近況。
笑いながら、何度も同じ話を繰り返す。
特別なことは、何もしていない。
それなのに、不思議なくらい満たされていた。
「もてなすこと」が大事なんじゃなかったのかもしれない。
ただこうして、また同じ時間を共有できること。
それ自体に、意味があったのだと思う。
そして、
久しぶりに会った友人たちは、皆それぞれの場所で、着実に前に進んでいるように見えた。
その姿を見て、少しだけ、取り残されたような気持ちにもなった。
自分だけが、病気になって、同じ場所で足踏みしているような感覚。
がん患者というのは、こういう孤独とも向き合うものなのかもしれない。
そんなことを、ふと考えてしまう自分がいた。
帰り際、ひとつ約束をした。
——がんを克服したら、また台湾で会おう。
そう言って、彼らを見送った。
最近は、検査結果や体調に一喜一憂する日々が続いている。
それでも今日、久しぶりに思った。
負けるもんか、と。
遠くから来てくれた友人との再会は、
そんな気持ちを思い出させてくれる、静かで確かな邂逅だった。