昼過ぎから降りだした雪は、一向に止む気配はなくて夜になると風も強くなってきた
吹雪になるかもしれないな
翌朝、カタっという物音で目が覚めた
カーテンを開けると雪はすっかりやんでいて、庭一面が真っ白な雪で覆われていた
テレビのニュースには、何十年かぶりの大雪で通勤の足にも影響が出ていると都心の駅の様子が映し出されていた
コーヒーとトーストだけの朝食を済ませ、そういえば図書館で借りた本の期限が、今日までだと思い出した
返しに行くか
面倒だけど期限は守らないとな
長靴を履いて玄関を出て、鍵をかけていると誰かが背後を横切った気配がした
振り返っても誰もいない
気のせいかな
歩き出したそのとき、玄関先の雪の上に小さな足跡があるのに気がついた
足跡は点々と庭まで続いていて、辿った先で一匹の黒猫が桜の木を見上げていた
猫は枝に積もった雪から落ちる雫が気になるようで、必死に手を伸ばして雫を掴もうとしている
その時、別の枝から雪の塊が滑り落ちてきた
あぶないっ
飛び退いた猫の前に雪がドサっと音をたてて落ちた
あぶなかったな
大丈夫か?
猫は驚いたように、まん丸な目をして俺を見た
そしてやっと聞こえるくらいの小さな声
みゃぁと啼いた
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