母が認知症になる前は、同じく認知症の父の面倒を母がみていた。
家事全般を母がしていたけれど、それがままならなくなった今、いくつもの困り事があり、中でも洋服の管理が出来なくなったことは大きい。
母はかろうじて洗濯機を回し、外に干すことは出来る。
干した洗濯物はそのままの形で一旦部屋の中に移動して、干されたままの状態ので放置。それを畳んで片付けることは出来ない。
いつしか欲しい物があればそこから取るシステムに変わっていた。
そして不思議なことに、それらの洗濯物や2人の衣類が失くなる現象が起きていた。
下着や服がないと言われ、幾度となく買い足してきたけど、それらにまたお目にかかることはなく、それっきり行方不明ということも多々あった。
2人に聞いたところで知らないと言うし、訳がわからなかった。
後におおよその理由がわかってくるのだけど。。
そして2人の服装は次第に変わっていった。
あるときは父が母の肌着を着ていたり、肌着を前後逆に着ていたり、同じ肌着を3枚重ねて着ていたり、上下ともに母の服を着ていたこともあった。
母が肌着の上にブラジャーをしていたり、洋服の上に肌着を着ていたり、父の服を着ていたり、服を裏返しに着ていたり、肌着を服と間違えて2枚重ねにしていたり。
両親はお互いのそんな格好を見ても、お互いにそれに気付かない。
父が母の肌着を着て、その上にこの暑いのに母の袖無しのダウンを着て、野球帽をかぶり、マスクをして自転車に乗って向こうから走って来るのを見たときはギョッとした。
服には食べこぼし跡がすごく多くて、ずいぶんとみすぼらしくなった。
以前は母が父の衣類にも気を配ってくれていたけど、母はもう父の見た目など目もくれない。
自分のこともままならないのだから。
やはりいつも側で身の回りのことを管理してくれる人がいないとこうなってしまうのかと、ここ数ヶ月で急激に変わっていく2人を見て悲しくなってしまった。