アメリカで嫁さんが出産時期を迎えた。初めての出産だから何をどうすりゃいいのかよくわからない。
アメリカでは出産後の入院期間は通常3日、と聞いた。出産翌日に退院して仕事へいく女性もいるらしい。
長くいると入院費用も高いだろうから、午前0時過ぎてから入院することにしていた。陣痛が断続的に来ていたが、あと15分だ! うん!
0時過ぎに入院。病室はホテルのようで、消毒薬の臭いもしないのはどうしてなんだろう。
かかりつけの医師は韓国人で日本医師の免許も持っている方だったから日本語も完璧。ところがその医師は出産直前まで来ないと初めて知った。部屋にきたアメリカ人医師と看護婦総勢5人ぐらいとは英語で説明しないとならない。
ロースクールに留学していたので法律用語なら英語で言えるがこの場じゃ全く役に立たない。
そういや、陣痛も破水も その英単語を知らない。
「で、状況はどうなの?」アメリカ人医師が聞いてきた。
破水がわからないから、 ウォーターカミングアウト と言った。なんか水が壁から染み出てきたみたいだ。
医師は笑わずに「ふむふむ」とうなずいてくれた。
その他の質問が続いた。体調とか痛み方とか。痛い!じゃだめで、どういう風に痛いか、これを伝える英単語なんて全く知らない。今だって、しくしく痛い、ちくちく痛い、ぐりぐり痛い、を英語で言えない。言えるひとはそういまい。
それでもじたばた説明したら、奥でゼイゼイ息をしていた妻が、手招きしているのに気が付いた。
「どうした? とても痛いのか?}飛んで行って尋ねたら、妻はこう言った。
「今の英単語、間違ってる・・・」
一気に力抜け、使命感が霧散してしまった。以後妻自身に説明してもらった。
妻はこの事態に備えて、出産関連英単語帳を作り、覚えていたのだった。