おはようございます音譜

 

本州以南は連日の猛暑のようですね滝汗

でも、北海道は連日の雨雨

 

食品の買い出しすら、外出したくない…。

家にこもりがちの毎日ですダウン

 

でも、そのおかげでゆっくり読書できました。

 

『タラント』 角田 光代

 

久しぶりの角田作品。

そして安定の角田作品。

とっても良かったですチョキ

 

 

主人公のみのりとその祖父・清美の半生、

今と昔を行きつ戻りつしながら物語が進んでいきます。

 

故郷・香川から、開放の地を求めて

東京の大学に進学したみのり。

そしてボランティアサークルに所属し、

様々な貧困の国を見聞して歩くが、

本当に自分のやりたい道を見いだせず…。

やがて、積極的にアクションを

起こす生き方を手放していく。

 

一方、祖父・清美は学生の時に戦争にかり出され、

被弾し片足を失ってしまう。

その時から、

清美は一切の考えること、望むことを手放した。

 

 

 

一切の感情を手放した清美が

心の中で吐く言葉は、

「何も考えるな、何も求めるな」だけ。

 

それが、とても胸に迫ります。

彼は、感情を失いたいほどの苦しみを受けたんだなと汗

 

 

豊かな時代に生きるわたしたちと、

戦争を経験した先人とは、

受けてきた苦しみは明らかに違いますよね。

 

昔の人からしたら、今の人の苦しみなんて、

「甘っちょろい!」と叱咤されるかもしれない。

 

状況や環境によって感じ方は違う。

でも、その時、その人の中では

苦しみや葛藤があって、いっぱいいっぱいなんですよねあせる

大切なのは、もがきながらでも、考えて希望を持つことなんだなぁ。

 

清美も結局は、あえて「何も考えるな。何も望むな」と

常に自分に言い聞かせなければいけないほど、

気がつくと考え、希望を求めていたんだから。

 

決して、答えがある物語ではありません。

様々な年代の登場人物の葛藤がまっすぐ描かれています。

 

だから、きっと読者も、それぞれの人物のそれぞれの状況に

自分の過去や今を重ね合わせて、感情移入できる作品だと思います。

 

今年の春、大学生になった娘もすごく良かったとニコ

彼女もきっと、この先に広がる自分の世界に

迷い葛藤するんだろうなぁ~。

 

もう人生折り返しをとっくに過ぎた私でさえ、

迷い続ける日々で、このような良書に救われています音譜