こんばんは
連日厳しい冷え込みです
インフルエンザも猛威を振るっていますね
体調管理にはくれぐれも気をつけましょう
さて、スキーに明け暮れているせいで、
読書の方はとぎれとぎれ…。
やっと読了しました、こちら。
『勇魚(上・下)』 C.W.ニコル
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江戸末期の紀州・太地町は鯨獲りの村だった。
そこで筆頭刃刺を父に持ち、
近い将来その地位を継ぐこと疑わなかった甚助。
しかし、1匹の鮫との格闘で左腕を失ってしまう。
失意のどん底に沈む彼に希望を与えたのは
若き紀州藩士の松平定頼であった。
日本に開港を迫る外国からの脅威に対抗するためには、
強い海軍が必要だと感じた彼は、
優れた鯨獲りである甚助に密偵を持ちかける。
大切な家族と好いた女を村において
琉球に秘密裏に渡る甚助。
そこから、世界の海を舞台とした彼の第2の人生が始まる。
一方、
太地に残された甚助の家族
動乱の日本を憂い奔走する定頼
一度は大きく分離したそれぞれの人生が
長い時を経て、再び交わる…。
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狩猟民の話が大好物の私に、
ドンピシャ!の作品でした
「勇魚」というのは鯨の古称だそうです。
この作品を日本人ではないアメリカ人が
描き切ったという事実に、まずは驚かされます!
C.W.ニコルさん、かなり事前に調べられたんでしょうね。
日本古来の鯨漁と、アメリカ式の鯨漁の様子が
書かれていますが、日本式の方が断然カッコイイ
25艘の船団、300人を超える漁師たちの
見事までのチームプレイは勇壮かつ華麗です。
幕末という動乱の時代に生きた3人の男視点で
物語は進んでいきます。
小さな村を出て世界の海を渡り歩く甚助
国に命を懸けて仕える武士・定頼
甚助の身代わりとして生きる甚助の弟・三郎
それぞれが自分なりの大義のもとに
正直にまっすぐに生きた男たち。
だけど、どんな理由があろうとも、
戦に生きる男にも、
家族や恋人を捨て自分の夢を追う男にも、
共感できないわ~
だから、小さな村で、自分の家族との小さな平穏を守る
三郎の健気な姿に一番共感できました。
彼こそ、男の中の男だ
長年心を閉ざしていた妻・およしと結ばれるシーンには、
涙を止めることができませんでした
歴史に名を刻む偉人でもなく、
多くの羨望の眼差しを受けたヒーローでもなく、
愚直に大切な人のために生きた男に胸を打たれるのは、私が女性だからでしょうか…。
男性なら、甚助や定頼に惹かれるのかな。
尊王攘夷の機運高まる幕末と
衰退する鯨漁の村の運命が重なって見えました。
時代の流れには抗えないということでしょうか
勇魚のように、
とてつもなくスケールのでっかい物語でした