不妊治療を始める前に、子供が何人欲しいというような明確な家族計画があったわけではないが、上の子が生まれてから暫くして、二人目を考えるようになった。
理由はシンプルで、将来私達夫婦がいなくなったら、上の子が一人ぼっちになってしまうからである。
日本に私の家族はいるが、なにせ遠い。

既に上の子でさえ高齢出産だったので、自然妊娠に拘って時間をロスする余裕は無いと思い、すぐにBetaで凍結胚移植をすることにした。
Betaを受診すると、まず凍結している初期胚を胚盤胞まで育てることを提案された。
そもそも胚盤胞まで育たない胚は、子宮に移植したところで育たないので、時間とお金を節約するためにも、胚盤胞まで育ててから移植した方が、妊娠する確率が上がるということである。

私達は9つの初期胚を凍結保存していたが、胚盤胞になったのは4つだった。
半分以下になってしまったのは結構ショックだったが、この胚盤胞を一つずつ移植することにした。
上の子の時は初回で妊娠したが、二人目はなかなか妊娠しなかった。
1回目と2回目の胚盤胞移植では全くかすりもせず、3回目の胚盤胞を移植したときはhcgが伸びず、化学的流産となった。

凍結保存してある胚盤胞はあと一つだけとなり、次回ダメだったら再び採卵と体外受精をしようと夫と話していたが、私自身は気持ちに余裕が持てなくなってきていた。
凍結胚移植は一回当たりR$3,500(約10万円)ほど掛かる。
既に30万円ほど使った上に、次の移植で妊娠しなかったらまた採卵・体外受精で50万円近く掛かる。それでも妊娠できなかったら、私はどこで踏ん切りをつけるのか… 

ちょうど年末を迎えていたので、一周期休んで気分転換をしていたところ、自然妊娠したのである。
後日、かかりつけの産婦人科で聞いた所、直近ではホルモン剤を止めていたものの、それ以前に移植に備えて飲んでいたホルモン剤の影響が身体に残っていて、妊娠しやすくなっていた可能性が高いという。

下の子を自然妊娠し出産した今でも、一人目の不妊治療に踏み切って本当に良かったと思っている。
子育ては体力勝負だと日々実感するし、約二十年育てなければならないことを考えれば、やはり私達夫婦には入り口で躊躇している時間は無かったからだ。

さて、Betaにはあと一つだけ胚盤胞が凍結保存されている。
ゆくゆくはこの胚盤胞をどうするか、夫と私に残された宿題である。