サンパウロでは、車の運転が荒い人が非常に多い。
この国では歩行者優先なんて言葉は存在しないんじゃないかと疑ってしまうぐらいである。
実際、事故を頻繁に目撃するし、私自身も青信号の横断歩道で、脇見運転の軽自動車にぶつかられたことがある。
今でも信じられないが、運が良かったことに、抱っこしていた子供も私も無傷だった。

同じ頃、近所で起こった悲惨なケースを耳にした。
住宅街をポルシェが疾走し、道を渡ろうとしたdiarista(お手伝いさん)を轢いてしまったという。
被害者は亡くなり、逃げた加害者は捕まったものの、罰金を支払い、一定の免停期間を経て再び運転できるようになったという。
被害者遺族は貧しいため弁護士を雇うことができず、裁判を起こせなかった。
呆れたことに、このポルシェの運転手はこうした事故を起こしたのが2度目だったそうだ。

日本でもブラジルでも、交通事故の加害者への罰則の軽さが議論の的になる。
一度被害者になってみると、言葉にならないほど腹立たしいし忌まわしく、加害者が再びハンドルを握ることができるなんてありえない!と思う。

何十年も前、小学校で「青信号に変わったら、右見て左見て、もう一回右を見て渡りましょう」と習ったことを思い出した。
小学校の交通安全教室の教えだけでは防ぎきれない事故が巷に溢れている。
それでも…、歩行者に出来ることは自衛しかないと、自身と家族に言い聞かせるのである。