彼は駅の改札口前で、傘を持って立っていました。
第一印象はとても線の細い人。
短髪で肌が黒く、眉がきりっとした切れ長の目、実物は写真よりも男前に見えました。
「今日の天気予報って、雨でしたっけ」
「どうだろ。降りそうだったから」
確かに、その日は曇り空でした。
少しツンとした表情が反抗期の男子みたいで、彼を一言で表すなら「尖ったナイフ」って表現がピタリとくる感じがしました。
私達は西口から電気街を歩いて、良さそうな喫茶店を探しました。
「あそこは?」
と、彼が指差したのは、ルノアール。
ひぃっ
と思ったのですが、前に入ったのは東口。西口なら混んでないかも
またしてもテーブル席の並ぶ二人掛けに案内されました
ルノアールの店員さん、察して下さい〜〜



注文したコーヒーが届き、猫舌なんだよねと言ってコーヒーが冷めるのを待っている彼。
ツンツンとした印象とのギャップが可笑しくて、
「消防士なのに、熱さに弱いの?」
冗談で言ったつもりが、彼の表情は少し硬くなりました。
「僕は消防士に向いてないかもしれない。体もみんなと比べて小さいし、泳げないし、熱いのが苦手だしね」
「ごめんね
そんなつもりで言ったんじゃないよ。人を助ける仕事だから、プレッシャーもあるよね。怖いところに飛び込んでくなんて凄いと思う。私は尊敬する」
そんなつもりで言ったんじゃないよ。人を助ける仕事だから、プレッシャーもあるよね。怖いところに飛び込んでくなんて凄いと思う。私は尊敬する」内心、失言してしまったと思いました

彼はとても繊細で、言葉一つ一つに敏感で、なにかを心に秘めている人に感じました。ちょっと神経質っぽいけど、私の話には楽しそうに耳を傾けてくれたし、悪い人じゃなさそうだと思いました。
2時間くらいお茶して店を出ると、パラパラと雨が降り出していました。
「ほら。傘、必要だったろ」
「ほんとだ! おかげで濡れずに済んだよ。ありがとね
」
私は彼の傘に入れて貰い、隣りを歩きました。
駅に着いて、改札口にまで辿り着いてしまった時、直感というべきか、このまま彼と今日だけで終わりたくないなと思っていました。
すると、彼はケータイを取り出した。
「今度は飲みに行かない? 連絡先、教えてよ」
男性からのお誘いをこんなにも嬉しく思ったのは久々のことでした。
つづく
